日本皮膚科学会雑誌
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原著
女性医療における皮膚科診療―心身医学的に見た受診患者の特徴について―
堀 仁子安藤 菜緒中里 博美有川 順子渡邊 郁子加茂 登志子檜垣 祐子
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ジャーナル 認証あり

2013 年 123 巻 1 号 p. 25-31

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抄録

2004年9月から2010年8月までの6年間に女性外来の皮膚科を受診した女性患者1,458名について,その特徴を心身医学的側面に注目し,検討した.患者の年齢は,1~91歳にわたり,30~34歳,45~49歳にピークがあった.計3,414件の診断名のうち湿疹・皮膚炎群が37.3%と最も多く,疾患としてはアトピー性皮膚炎344件,乾皮症性湿疹228件,手湿疹81件,脂漏性湿疹74件,その他の湿疹305件,などであった(複数所見あり).次いで,毛胞脂腺系疾患が17.2%を占め,ざ瘡442件,円形脱毛症47件,酒さ様皮膚炎44件,などがみられた(複数所見あり).全患者の24%,349名は皮膚心身症と判断したが,診断としては,アトピー性皮膚炎129名,ざ瘡48名,その他の湿疹47名,蕁麻疹27名,などであった.ストレス因子をDSM-IV第4軸に沿って分類できたのは皮膚心身症の79.4%で,職業上の問題(42.3%),家族の問題(35.5%)が多く,その主な内容は対人関係であった.さらに青壮年(21~39歳),中年期(40~59歳)に分けると,前者では職業上の問題が,後者では家族の問題が最も多かった.DSMIV第4軸に沿って分類しえなかった20.6%では,皮膚以外の身体・精神疾患をストレスと感じている場合や,特定のストレス因子を見出せないものの,対人スキルの問題を抱える場合などがあった.女性皮膚科学の診療においては,皮膚心身症と捉えられる症例が少なくない.これらの患者に対しては,職業上や家族の問題などのストレス因子の把握に努めるとともに,ストレス対処法,特に対人スキルの習得を図るための心身医学的治療を併用していくことが望ましいと考えた.

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© 2013 日本皮膚科学会
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