日本皮膚科学会雑誌
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123 巻, 1 号
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皮膚科セミナリウム 第93 回 内臓全身と皮膚症状
  • 片岡 葉子
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第93回 内臓全身と皮膚症状
    2013 年 123 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    疾病の成立あるいは遷延化には生物学的因子,心理的因子,社会的因子の3つが互いに相関を持ちながら関与しており,これらを考慮することは皮膚科診療においても有意義である.心理社会的,生物学的両面から心(脳)と皮膚をつなぐメカニズムを概説した.生物学的には,内分泌経路(hypothalamus-pituitary-adrenalaxis;HPA),自律神経経路(sympatheticaxis;SA),神経ペプチドを介する経路(neurotrophinneuropeptideaxis;NNA)の3つの系で連絡がありこれに免疫系が加わって皮膚における心身相関に関与していると考えられている.生物学的にも心理社会的にも心身相関は一方向の因果関係ではなく,悪循環によって症状の遷延化に加担していることを理解する必要がある.このことを踏まえて,皮膚科診療における心身医学的治療の要点として,適切な身体的治療の重要性,治療的自我の養成,信頼関係を確立する面接の方法,治療方針の立て方,チーム医療の意義について略説した.
原著
  • 齊藤 典充, 新山 史朗, 向野 哲, 前島 秀樹, 天羽 康之, 神田 奈緒子, 澁谷 修一郎, 矢野 正一郎, 大西 誉光, 石川 武子 ...
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    16歳以上の円形脱毛症患者71例に対し,セファランチンと他剤の併用療法を行い,病型別にその臨床効果,併用薬剤数,有害事象等について検討した.セファランチンに併用された薬剤(治療法)は,グリチルリチン製剤,ステロイド外用剤,塩化カルプロニウム液,液体窒素療法であった.全71例における改善度は著効8例(11.3%),有効34例(47.9%),やや有効23例(32.4%),不変5例(7.0%),悪化1例(1.4%)で,有効以上の症例は42例であり,有効率は59.2%であった.単発型の治療は,2種類の薬剤を用いた症例が最も多く9例で,そのうちの7例(77.8%)がセファランチンとグリチルリチン製剤あるいは第2世代抗ヒスタミン剤(以下グリチルリチン製剤等)の経口剤の併用であった.多発型においては各々の併用薬剤と対照群との有効率を比較すると,各種併用薬,併用療法を用いた群と用いなかった群の有効率の間に有意差は認められなかった.次に二剤併用群の有効以上の症例の治療内容を検討してみた.その結果セファランチンと塩化カルプロニウム9例中8例(88.9%),セファランチンとステロイド外用剤が4例中3例(75.0%)であり,経口剤と外用剤の併用が行われた症例が経口剤のみを併用したセファランチン・グリチルリチン製剤群11例中5例(45.4%)に比し高い有効率があり有意差が認められた(p<0.05).以上よりセファランチンは他剤特に塩化カルプロニウム液ないしはステロイド外用剤との併用療法が臨床的に有効であると言える.
  • 池澤 優子, 蒲原 毅, 松倉 節子, 相原 道子, 池澤 善郎
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    症例1:68歳,男性.10年前より四肢に瘙痒を伴う皮疹が出現し,消退・再燃を繰り返していた.経過中,頸部・腋窩リンパ節の腫大,耳下腺・顎下腺の腫脹,胸部CTで縦隔,肺門部のリンパ節腫大,腎機能低下と蛋白尿がみられた.腎生検病理組織像でIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めた.これら時間的,空間的な臓器症状の多発に加え血清IgG4高値があり,IgG4関連疾患と診断した.顔面,体幹,四肢には強い瘙痒を伴う滲出性紅斑が多発していた.皮膚生検病理組織像では真皮に好酸球とIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めた.症例2:74歳,男性.健診で肝・胆道系酵素の異常を指摘され,胸腹部CTで硬化性胆管炎,肺線維症,後腹膜線維症の所見がみられた.十二指腸憩室部の粘膜生検病理組織像で間質に好酸球,形質細胞の浸潤を認め,無症候性胆管炎と診断された.同時期より四肢を主体に強い瘙痒を伴う紅色丘疹が出現した.皮膚生検病理組織像で真皮に好酸球と形質細胞の浸潤がみられた.いずれも浸潤する形質細胞のIgG4は陰性であったが,血清IgG4高値がありCTで本疾患に特徴的とされる複数の臓器に線維化を伴う腫瘤病変の存在が示唆され,IgG4関連疾患と診断した.IgG4関連疾患は,IgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化を伴う腫瘤性病変が様々な臓器に認められるのが特徴であり,好酸球浸潤を伴うこともあるとされる.自験例の組織学的に好酸球や形質細胞の浸潤を伴った皮疹は,本疾患に関連する症状と考えられた.
  • 堀 仁子, 安藤 菜緒, 中里 博美, 有川 順子, 渡邊 郁子, 加茂 登志子, 檜垣 祐子
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2013/01/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    2004年9月から2010年8月までの6年間に女性外来の皮膚科を受診した女性患者1,458名について,その特徴を心身医学的側面に注目し,検討した.患者の年齢は,1~91歳にわたり,30~34歳,45~49歳にピークがあった.計3,414件の診断名のうち湿疹・皮膚炎群が37.3%と最も多く,疾患としてはアトピー性皮膚炎344件,乾皮症性湿疹228件,手湿疹81件,脂漏性湿疹74件,その他の湿疹305件,などであった(複数所見あり).次いで,毛胞脂腺系疾患が17.2%を占め,ざ瘡442件,円形脱毛症47件,酒さ様皮膚炎44件,などがみられた(複数所見あり).全患者の24%,349名は皮膚心身症と判断したが,診断としては,アトピー性皮膚炎129名,ざ瘡48名,その他の湿疹47名,蕁麻疹27名,などであった.ストレス因子をDSM-IV第4軸に沿って分類できたのは皮膚心身症の79.4%で,職業上の問題(42.3%),家族の問題(35.5%)が多く,その主な内容は対人関係であった.さらに青壮年(21~39歳),中年期(40~59歳)に分けると,前者では職業上の問題が,後者では家族の問題が最も多かった.DSMIV第4軸に沿って分類しえなかった20.6%では,皮膚以外の身体・精神疾患をストレスと感じている場合や,特定のストレス因子を見出せないものの,対人スキルの問題を抱える場合などがあった.女性皮膚科学の診療においては,皮膚心身症と捉えられる症例が少なくない.これらの患者に対しては,職業上や家族の問題などのストレス因子の把握に努めるとともに,ストレス対処法,特に対人スキルの習得を図るための心身医学的治療を併用していくことが望ましいと考えた.
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