2017 年 127 巻 1 号 p. 31-38
72歳,男性.初診の7カ月前に,左鼠径部に境界不明瞭な紅斑が生じ,徐々に増大して結節を形成した.切除標本では,紅斑部の表皮内にPaget細胞,結節部の真皮浅層に印環細胞,真皮深層から脂肪組織に小型の腫瘍細胞が浸潤し,CK7,CK20,GCDFP-15に陽性を示した.全身検査では内臓腫瘍を認めず,総合的に皮膚原発性の浸潤性乳房外Paget病と診断した.乳房外Paget病に出現する印環細胞は粘液癌の性格を反映する.印環細胞の出現する二次性Paget病,転移性皮膚腫瘍,皮膚原発性腫瘍との鑑別が必要であり,診断困難例では検査結果を総合して判断することが重要である.