2011年に公開された「創傷・熱傷ガイドライン 創傷一般」は現在改訂中である.近い将来改定版が「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン 創傷一般」と,名称が若干変更された上で公開される予定である.本セミナリウムでは改訂版ガイドラインの概要を,改訂部分を中心に解説する.改訂の主なポイントは陰圧閉鎖療法,銀含有ドレッシング材,創傷における痛みの問題を新たに取り上げたことである.本稿の内容はあくまでも現時点での素案であるため,実際に公開されるまでに修正される可能性があることに留意されたい.
褥瘡は身体に加わった外力によって引き起こされる骨と皮膚表層の間の軟部組織の阻血性障害と定義されている.2011年に日本皮膚科学会雑誌に公表された褥瘡診療ガイドラインでは予防から治療に至る膨大な情報が集約されているが,本稿では皮膚科医が重要な役割を担っている診断と局所治療に重点を置いて解説する.褥瘡の局所治療は主に深達度と病期,病態によって選択がなされ,深い褥瘡では病期の前半と後半で治療のコンセプトが異なることが基本である.
糖尿病性潰瘍・壊疽は末梢動脈疾患,糖尿病性末梢神経障害,感染がひとつないし複数関与し病態を形成している.糖尿病患者に足潰瘍を生じた場合,皮膚科を最初に受診することも多いが,潰瘍の適切な評価や治療,専門科への速やかな紹介が下肢切断を免れることにもつながるため,皮膚科医は重要な役割を担っている.
痤瘡治療薬である過酸化ベンゾイル(BPO)含有ゲルによる接触皮膚炎の7例を報告した.1%BPO試薬およびBPO含有ゲルを用いて,パッチテストを行った結果,4例はアレルギー性接触皮膚炎,3例は刺激性接触皮膚炎と診断した.前者では発症までに9日~24日,後者では2日の外用期間であった.臨床所見のみでは両者の区別は困難で,外用期間・パッチテスト皮膚反応の継時的変化が有用だった.当院でのアレルギー性接触皮膚炎の発症頻度は2.7%であり,皮膚科医はそのアレルギー発現性に留意して処方すべきであると考えた.
72歳,男性.初診の7カ月前に,左鼠径部に境界不明瞭な紅斑が生じ,徐々に増大して結節を形成した.切除標本では,紅斑部の表皮内にPaget細胞,結節部の真皮浅層に印環細胞,真皮深層から脂肪組織に小型の腫瘍細胞が浸潤し,CK7,CK20,GCDFP-15に陽性を示した.全身検査では内臓腫瘍を認めず,総合的に皮膚原発性の浸潤性乳房外Paget病と診断した.乳房外Paget病に出現する印環細胞は粘液癌の性格を反映する.印環細胞の出現する二次性Paget病,転移性皮膚腫瘍,皮膚原発性腫瘍との鑑別が必要であり,診断困難例では検査結果を総合して判断することが重要である.