日本皮膚科学会雑誌
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新・皮膚科セミナリウム 発癌の仕組み
1.血管肉腫の発癌の仕組み
神人 正寿
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2019 年 129 巻 11 号 p. 2295-2300

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抄録

血管肉腫は肉腫全体に占める割合が約1%と比較的稀な,血管およびリンパ管を構成する血管内皮細胞から生じる間葉系悪性腫瘍である.病態が不明であり,診断が時に難しいにも関わらず有効な治療に乏しいのが診療上の課題である.

一方,融合遺伝子は通常の遺伝子変異とは異なり,腫瘍細胞において染色体の転座・挿入・逆位などが生じた結果,複数の遺伝子が結合することで生じる.例えば肺癌にみられる融合遺伝子EML4-ALKは病態の解明や新しい診断法・治療法の開発に著しく有用で診療に変革をもたらした.

皮膚悪性腫瘍のなかでは隆起性皮膚線維肉腫における融合遺伝子COL1A1-PDGFBが1997年に初めて報告されて以来よく知られている.我々は,血管肉腫においても融合遺伝子が原因になっているケースがあると考えNUP160-SLC43A3を同定した.血管肉腫における遺伝子異常についてのこれまでの知見とともに論じる.また,有棘細胞癌についての研究結果も紹介する.

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