2023 年 133 巻 3 号 p. 451-457
血管肉腫は,肉腫全体に占める割合は約1%と比較的稀な皮膚悪性腫瘍であるものの,高齢化社会を迎えたため,さらには乳癌に対する放射線治療の増加のためか近年増加傾向にあるという報告も存在し,皮膚科においてしばしば遭遇する臨床的に重要な疾患の一つである.腫瘍性病変の中でもとくに診断が難しいにも関わらず進行が早く,有効な治療に乏しいのが診療上の課題である.
その発症誘因として,外傷,紫外線,血腫,放射線治療または慢性リンパ浮腫などが知られているが,これらの因子が血管内皮細胞やリンパ管内皮細胞においていわゆる「癌遺伝子」に直接的あるいは間接的に影響した場合に血管肉腫を発症する,というメカニズムが考えやすいと思われる.
血管肉腫の発症機序に関する最近の知見について,点変異・欠失変異や融合遺伝子などの遺伝子変異,さらにはepigeneticsおよび関連分子の3つの観点から論じたい.