1957 年 67 巻 5 号 p. 304-
欧州に於ては18世紀よりクロームを扱う労務者に中毒症状として種々の皮膚障碍殊に鼻中隔穿孔を来す潰瘍発生報告多く,近来はその発生病因究明の論文に屡々接する.本邦に於てもかゝる報告は2,3あり.殊にクローム潰瘍に関する日野の研究業蹟あるも諸外国に比し例少し,又マンガンは中枢神経毒として,褐石磨砕夫に於ける中毒患者発生報告あり.これが皮膚科領域に於ける作用としては銅,鉄等と同じくメラニン形成に参与すると言われている.余は此の2種の重金属をイオントフォレーゼ法により家兎皮膚内に作用せしめ,その変化を組織化学的に追及した.