日本皮膚科学会雑誌
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皮膚色の研究 第Ⅲ報 皮膚色の素因的意義
西浦 環
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1957 年 67 巻 6 号 p. 408-

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抄録

体質学は人体を反応の場と考え,外敵刺戟(外因)に対する反応態度が個人により違うという事実に基いて各人の疾患準備状態の存在を想定する.同様に皮膚科学に於ても皮膚素因が皮膚病の発症に重大な役割を占めることは明らかであつて,吾々の教室に於ける一連の研究は皮膚機能の面から個体差を確認し,外的あるいは内的刺戟に対する皮膚の反応性が律動的,周期的に変化することを如実に説明している.Bergmann一派の体質学者は疾患成立には形態学的観察と共に生物学的反応を重視すべきであることを提唱したが,本邦に於ても遠城寺教授は体質が刺戟に対する反応能の個性であると言う見解に基いて,異常体質の標徴を色々の項目について検討し,小児体質票を案出した.本体質票によつて異常体質を選出すれば,かゝる児童には身体が弱く,小児喘息,消火器機能の薄弱な者の多いことが立証されたので,氏は栄養,環境などによつて影響される健康状態の改良を企てゝいる.皮膚の一標徴としての皮膚色が果して皮膚自体の罹患性と関係があるか否かについては北村教授の古今の文献から総括された発表があり(色素異常に関する綜説),また荒木,田崎,永石,岡元氏ら,太田氏ら,荒川教授らの研究もある.即ち色素沈着部の感受性が鋭いとの意見に対し(Kreibich,塙,田崎,岡元ら),反面では色白の皮膚の抵抗力が強いとの報告もある(Konigstein,Romer,Schaltz,荒木,永石,石井,荒川).金子教授門下の各種疾患々者の皮膚色測定の結果も癩,結核,精神病などで異常皮膚色が見られたという.上記の事実から皮膚色が皮膚抵抗力に関係し更に内部臓器の疾患が皮膚色に影響する事は確からしく,この事は皮膚素因即ち反応の場の状態が季節的に変動し,また皮膚機能が疾患の性格によつて変化する事からも想像されるところである.私は既報の如く学童の皮膚色を年間を通じ身体11カ所に於て継続測定し(CIE値に換算),その季節的変動,年齢的・性的差異を検討した.その際被験者全員について遠城寺教授の体質票に準拠した体質傾向を調査したので,同年間の缺席状態を参考にして罹患素因の有無を検討し,その結果が皮膚色の季節的変動と関連するか否かを考究してみた.

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