日本皮膚科学会雑誌
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實驗的ヴイールス接種マウス腦内に於ける核酸の定量的研究
中山 忠雄
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1958 年 68 巻 3 号 p. 136-

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抄録

1869年Miescherが核酸に関する研究の糸口を開いて,科学の分野に化学的生物学という新生面を導入し,その後この分野は生化学者の手に依つて多くの業績を貽しつゝ発展して来たが,1930年代に至つてスウエーデンのCasperson等に依つて核酸の生物学的意義としてデソキシリボ核酸(以下DNAと略す)が遺傳子の蛋白合成に,又細胞質での蛋白合成にはリボ核酸(以下RNAと略す)が重要な役割を果すことが明らかとなり,更にアメリカのStanley等に依つて1935年に初めてタバコのモザイクヴィールスが化学的に結晶として分離され,種々追究を行つた結果これが核蛋白質に他ならないことが判明した.その後各國の研究者に依つて続々と純粹な形として採り出された植物性,動物性,細菌性ヴィールスはすべて核酸を含んでいることが明らかとなつた.現在ではヴィールスを始めとして遺傳子や,更に大きくは細胞そのものは自己増殖型として知られているが,現在に至るまでの諸業績はすべて自己増殖系には核酸が存在するという一連の関係を明らかならしめた.こゝに於て余はヴィールスは核酸を含んでいる自己増殖系であるが故に,皮膚科領域に於ける若干のヴィールス株を用いてマウス大腦内にヴィールス接種を行い,ヴィールス接種に依る臓器組織の核酸代謝の動態を観察して,皮膚科領域に於けるヴィールス接種が核酸代謝,特にDNAとRNAに如何なる変化を及ぼすかを核酸の比色定量面より追究しようと試みた.

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© 1958 日本皮膚科学会
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