我々は200個余りの色素性母斑の組織像を検し年令的に一つの傾向あるを認めた.1つは幼時ではJ型が多く思春期以後にD型が多くなることである.これに対して我々は滴落説を執らず母斑ポテンシーの現われ方(現われる部位)が年令的に差がある為であかうと考えた.換言すれば母斑ポテンシー発現の年令に依る差を指摘した.第2に個々の母斑細胞,及びそれより成る母斑細胞巣は或る一定の老化過程を辿ることを見,J型ではjunction activityの消失,そして母斑それ自体の消失の可能性を予測し,D型では更に一層複雑な母斑細胞の変化―胞巣崩壊,細胞散在,線維化―のあることを認めた.更に51才以上の老人124名の全身を検し10名(8.06%)に色素性母斑の存在を認めたが,1例が点状集簇性母斑類似の臨床像であつた他は何れも扁平色素性母斑に相当するものであり,一方巨大な獣皮様母斑は認められなかつた.