日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
70 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 増田 良之助
    1960 年 70 巻 10 号 p. 973-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    近年,皮膚表面の不飽和化合物が,皮膚の生理機能に重要な役割を果していることが判明し,その作用機序に関して種々な考察がなされている.われわれは,活性二重結合を有する不飽和化合物として,桂皮酸コレステロールエステルcholesteryl cinnamateを合成し,動物実験,試験管内実験を行い,その皮膚に対する影響に就て考察することにした.同時に,皮脂成分の1つであるスクアレンsqualeneと表皮角化と密接な関係をもつとされている天然の不飽和化合物ビタミンAに就ても,同様な実験を併せて行つた.
  • 増田 良之助
    1960 年 70 巻 10 号 p. 982-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    第一篇において述べたように,われわれは桂皮酸コレステロールエステル(CC),スクアレン(Sq),ビタミンA(VA)のような活性不飽和化合物が実験動物に対して脱毛性を有しており,またこれらが毛髪周期に影響を与えることを知つた.そこで活性不飽和化合物のこのような皮膚に及ぼす影響の作用機転を知る為に,こゝでその化学構造と反応性の関係を検討してみたい.ある種の不飽和化合物は生細胞(構成蛋白,酵素も含む)のSH基を不活性化することによつて有効な作用を行うことはよく知られている.皮膚科領域において代表的なものはすでに述べたFleschの脱毛性化合物である.彼はallyl基およびvinyl基を有する合成不飽和化合物並びにビタミンA,スクアレンのような天然不飽和化合物の動物に対する脱毛作用を試験した結果,その作用機転が,RSH+>C=C<→>C-SR-CH<に従つて蛋白中のSH基を不活性化する為であろうと推定した.そうしてこれらの不飽和化合物の中,脱毛効果を有するものについてみると二重結合の隣にエステル基,Cl,メチル基などの電子牽引性又は電子反溌性置換基をもつか,あるいは共軛二重結合によつて二重結合がSH基との反応性を与えられている.1889年Eykmanはchavicol(4-oxy-1-allyl benzene)がフェノールの5倍,またオイゲノールの2倍の抗菌性を有することを報告している.またある種の抗生物質が抗菌性を示すのはその構造中のCO基に共軛する末端二重構造即ち,CH2=CH-C=O-なる構造がSH基に対して大きい反応性を有しており,これが菌体SH基を不活性化して菌代謝を妨害する為であると報告されている.またallyl aminとか蟻酸アリルのような不飽和化合物がSH基を不活性化することは,かなり以前から知られている.Nicoletはα-β不飽和ケトン(-C=C-C=O-)へbenzyl及びP-tolyl mercaptanが100℃で容易に附加すること及びα-β不飽和エステル(-C=C-C=O-OR)へは同様な附加がやゝ困難であるが,piperidinの存在によりこれが促進されることを見出した.またMethyl cinnamateの側鎖二重結合も幾分反応性が高められているとしている.更に彼はaminoacrylic acidに対するmercaptanの附加反応に関連して,cystine,methionine,homocystineの可能な生合成の初期段階に,SH反応が重要な役割を果すものと考えている.Morgan及びFriedmanは,前述の抗生物質と類似な構造をもつマレイン酸について実験を行い,gluta-
  • 増田 良之助
    1960 年 70 巻 10 号 p. 994-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    第1篇,第2篇で報告したように,われわれは活性不飽和化合物が実験動物に対して脱毛性を有することを認め,またそれがin vitroに於いてSH基を不活性化することから,この作用機転はその活性二重結合とSH基の結合によつてSH基を不活性化するためと考えた.そこでわれわれはこれらの化合物の二重結合のもつ意義を知る別の手段として,桂皮酸コレステロールエステルの二重結合を水添飽和せしめるか,あるいはメルカプタンを附加して不活性化せしめたものに就て同様の術式をもつてin vico並びにin vitro試験を行つた.ついで表皮上に於いても,このような活性不飽和化合物と表皮SH基との間に反応が起り得ると考えてさしつかえないかどうかを知る為に,活性不飽和化合物として桂皮酸コレステロールエステル(CC)を,メルカプタンとしてはn-butyl mercaptan(BM)を用いてin vitroに於いて附加反応実験を行つた.
  • 小嶋 理一, 上野 賢一
    1960 年 70 巻 10 号 p. 1003-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    我々は200個余りの色素性母斑の組織像を検し年令的に一つの傾向あるを認めた.1つは幼時ではJ型が多く思春期以後にD型が多くなることである.これに対して我々は滴落説を執らず母斑ポテンシーの現われ方(現われる部位)が年令的に差がある為であかうと考えた.換言すれば母斑ポテンシー発現の年令に依る差を指摘した.第2に個々の母斑細胞,及びそれより成る母斑細胞巣は或る一定の老化過程を辿ることを見,J型ではjunction activityの消失,そして母斑それ自体の消失の可能性を予測し,D型では更に一層複雑な母斑細胞の変化―胞巣崩壊,細胞散在,線維化―のあることを認めた.更に51才以上の老人124名の全身を検し10名(8.06%)に色素性母斑の存在を認めたが,1例が点状集簇性母斑類似の臨床像であつた他は何れも扁平色素性母斑に相当するものであり,一方巨大な獣皮様母斑は認められなかつた.
  • 田中 英正
    1960 年 70 巻 10 号 p. 1014-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    近代皮膚科学が単に皮膚のみの古典的な形態学的観察に終始することなく,多少なりとも全身性変化の一環として,その病像・病因を解釈せんとする傾向に到つたことはきわめて進歩的な脱皮であると思惟する.すなわち各種皮膚疾患の際,生体を皮膚以外の各器官・系統に就て種々な方面から追求した結果が疾患の本態の解明に繋がるか否かは論外としても,その病像の解釈に新知見を齎らすものである.従来皮膚疾患に於ける心電図(ECGと略)の研究・不整脈の追求は殆ど等関に附されていた感が尠くない.著者は全身性系統的疾患として注目されているエリテマトーデス及び他の二,三の疾患に就てECGを施行し聊かの結論を得たのでその成績に就て概要を記述した.
  • 成田 裕
    1960 年 70 巻 10 号 p. 1039-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    表皮に於けるメラニン色素及びメラニン形成細胞及び保有細胞の研究は,現在迄多数の研究者により行われていて,近時その知見及び学説は数多く発表され,その進歩は著しいものがある.中でも,Bloch(1917)のDopa反応の発見による色素形成細胞と担色細胞の問題,Masson(1935)の表皮をMalpighi系細胞と樹枝状要素,所謂色素形成細胞と2系列に大別した問題,更にMasson(1948)のヘマトキシリン・エオジン染色標本で見られる澄明細胞(clear cells)の問題,Becker-Fitzpatrich-Montgomery(1952)によるtyrosinase反応の研究による樹枝状細胞(dendritic cell)の問題,Weidenrich(1912)に始まる各種脊椎動物に於ける発生学的研究の結果,Masson(1948)が樹枝状細胞は表皮細胞と異なり中枢神経即ち神経櫛に由来する細胞であると発表した問題,Zimmerman(1954)の胎児メラノサイトの問題等々,有力な学説となりつゝあるものもあれば,尚未解決の問題で,充満されているものもある.著者は,主として表皮メラノサイトの電子顕微鏡的研究に先だつて,少しく従来の方法によつて組織学的に,表皮色素形成細胞の問題の研究を行つたが,近年20,000~100,000倍の分解能に達して,光学的顕微鏡より遥かに詳細な研究が可能となつた電子顕微鏡を主として使用する事により研究の進展を計り度いと考えた.電子顕微鏡的研究は,皮膚科学的には未だ緒についた許りで,Peace(1951),Laden(1955),Birbeck(1956),Selby(1955),Clark & Hibbs(1958)等の研究によつて,漸次明らかにされつゝあるが,現在尚お充分な細胞微細構造に対する解析が得られず不明の点が多いが,著者の研究によりその一部を解明し得たと思うので,こゝに報告する次第である.
  • 1960 年 70 巻 10 号 p. 1056-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
  • 1960 年 70 巻 10 号 p. 203e-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
feedback
Top