日本皮膚科学会雑誌
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自家感作性皮膚炎(Auto-sensitive Dermatitis)の実験的研究
小泉 雄一郎
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1962 年 72 巻 12 号 p. 923-

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抄録

自家感性(Auto-sensitive dermatitis,Auto-sensitizationsdermatitis,以下a.d.と略記)は近年次第にその本態に関して新知見の発表を見ており,その診断名もようやく頻繁に使われるようになつた.しかしa.d.を実験的に検索した報告は内外に於てむしろ甚だ少ないので,ここに皮膚自己抗体に関する実験を中心とした研究を述べ,併せてa.d.発生病理についての我々の考えを述べる事にする.周知の如くa.d.は理論的には自己免疫の結果発生するものと思われる.即ち自己の組織成分に対する抗体が自分の体内で産生されて,その抗体(自己抗体)が体内組織と反応を起こす事によつて病的状態を顕わすのであつて,a.d.の場合では,始め身体の一部に湿疹様乃至皮膚炎様の変化等が存在し,その病巣部で皮膚,特に表皮が修飾された状態で慢性に存続していると,表皮に対する自己抗体が作られ,a.d.が発生する可能が生ずるのである.谷奥はa.d.の診断名の確立には次の5つの条件が必要であるとしている.即ち1)患者に皮膚自己抗体が存在する事.2)実験的に動物で皮膚自己抗体を作る事.3)動物に人体に於けると同様の疾患を作る事.4)患者にKobner現象が現われる事を証明する事.5)患者でautograftが失敗することが多い.我々の実験も上述の観点に立つて,次の4編に纏めて論述した.第Ⅰ編 患者の,特に血清中に於ける皮膚自己抗体の検索.第Ⅱ編 動物で皮膚自己抗体を作る実験.第Ⅲ編 動物に人体に於けると同様の疾患を作る事.患者にKobner現象の現われる事,患者ではautograftが失敗することについての小実験.第Ⅳ編 実験補遺

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