抄録
Merkel触細胞(または触小体)は1875年, Merkelが鳩,猫,豚,牛,人などの皮膚について記載したのか最初とされている.Merkelはその中で,触細胞は澄明な核を有する泡状細胞で,原形質の中に1本の無髄神経が進入する.表皮の最下層に位置するもので,触覚器管としては最も単純なものでありTerminale Ganglien-zellenに由来するものと述べている.その後表皮内神経, Merkel触細胞について数多くの研究業績かあり,表皮細胞に由来するものとされていた.豚鼻などでは明かにMerkelで細胞を認めることができるが,人間に関しては近年,色素細胞の本態が解明されるに及んで,Merkel触細胞の存在を否定する意見か多い.過去においてMerkel触細胞として報告されている澄明な細胞には,表皮メラノサイトを思わせるものも認められる.表皮メラノサイトとしての澄明細胞(clear cell)と同義に解釈している学者もあり,人体におけるMerkel触細胞の本態に関しては未だ定説がなく判然としない.皮膚科領域においては,母斑及び母斑症の研究のため神経系統と同じく神経節に由来するところの色素細胞との関係か追求されてきた.はたして人体にMerkel触細胞が存在しないとすれば,発生の途中でCrista profunda intermediaに現われるといわれているMerkel触細胞の本態は何であろうか.この疑問を解く目的をもって,第1篇で用いた新鮮材料についてメチレン青染色を施行した例のうち,満足すべき染色結果を得た胎令7カ月と9カ月胎児において皮膚神経と共にこれについて追求した.