日本皮膚科学会雑誌
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皮膚科学の過去・現在・未来
伊藤 実
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1965 年 75 巻 10 号 p. 710-

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抄録

19世紀末皮膚科学の主流をなしたウィーン,ブレスラウないしサンルイの学風を祖述したわが皮膚科学は先輩の努力によつてわれらに西欧なみの基礎を与えられたもので,第2次大戦直前までは吾人の診療対象は伝染性疾患が大半を占めており,従つて京都大学のスピロヘトジス,東京大学中心の真菌症の研究の如きがそのもつともなるものであつた.しかるにDomagkのプロントジルに発端する化学療法,Flemmingのペニシリンを先駆とする抗生物質の出現は伝染性皮膚病を激減せしめたが必ずしも絶滅せしめるには至らず,素朴な感染に替つていわゆるhost-parasite-relationshipたる複雑な形相に変貌され,アレルギー学説の導入される領域も拡張された.また従来病理学者から疎んぜられていた皮膚病理組織学がKlingeの類線維素変化,次いでKlempererの膠原病概念の提唱によつて俄かに脚光を浴び,吾人のお株を病理学者,内科学者にさらわれた観を呈し,聊か憮然たるものがある.

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© 1965 日本皮膚科学会
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