日本皮膚科学会雑誌
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実験皮膚炎の細胞化学的研究
服山 公江
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1965 年 75 巻 9 号 p. 602-

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抄録

一般に化粧品薬剤として,広く使用されている流動パラフィンは,人および実験動物の表皮を肥厚し,角化異常をきたすことによつて,局所の実験的接触性アレルギー性皮膚炎の反応を強くすることが認められている.このような感受性の増加は,他の表皮肥厚剤の塗布によつても観察されているが,表皮が厚くなつているためにおこるその部の抗原生産量,または薬物浸透性の変化にもとづくと解釈されている他に,遊走細胞の抗原抗体反応への加担の可能性も考慮されている.流動パラフィン塗布後の皮膚変化は,牛に見られるX-disease,またはchrcnic bovine hyperkeratosisと呼ばれる変化に類似のものと考えられ,表皮の細胞分裂増加,細胞肥大につづいて角質過生を生ずる非炎症性の反応であると報告されているが未だその研究は充分ではない.またこの表皮肥厚には,⊿7choresterolの減量を伴なうことが報告されている.他は,その部の物質代謝の変化についても明らかではない.化粧品によつて皮膚炎が発生する時にも,添加した特殊薬剤,香料がその原因として問題となると同時に,使用した流動パラフィンが直接に皮膚炎を惹起し,または皮膚炎準備性を確立することを見逃すことはできないと考えられる.そこでモルモットに流動パラフィンを塗布し,その皮膚の変化につき組織学的に観察する他に,局所のDNAの生成およびグリコーゲン蓄積につき検討し,流動パラフィンによる表皮肥厚の本態を究明することを試みた.

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© 1965 日本皮膚科学会
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