日本皮膚科学会雑誌
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Coenzyme Qの皮膚科領域における臨床的研究とその薬理学的研究
磯部 茂
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1967 年 77 巻 6 号 p. 401-

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抄録

Coemzyme Q(CoQ)は1940年Mooreにより初めてその存在が報告され,その10年後にLiverpool大学のMortonら並びにWisconcin大学のGreenらにより本格的な研究がなされ,今日広く生物界に存在することが知られている一種の脂溶性のキノンである.CoQの生理学的研究は現在までに種々の検索がなされているにもかかわらずその臨床的応用に対してはほとんど文献上見当らず,特に皮膚疾患に対しては皆無といつてよい.1961年にOlsonらはラットにU-C14フェニールアラニンを投与し,肝よりCoQを分離し,その放射活性の分子内分布を調べたところ,大部分の放射活性がキノン部分に局在していることを発見し,更にGloorらはラットにラベルしたチロジンを投与し,肝不鹸化物中に投与量の0.17%を認め,次に肝不鹸化物中のCoQをオゾン分解してキノン核に由来するフェニル酢酸化合物の放射活性を測定し,それがCoQの63%に相当するこを確認した.この結果Olson,Gloorらはキノン核の前駆物質がフェニールアラニン,チロジンであると述べている.一方ZanonniらはビタミンC欠乏によりチロジン代謝異常を生ぜしめたモルモットに対し,アスコルビン酸とCoQ10を併用投与すると血漿チロジン値並びにパラハイドロオキシフェニール焦性ブドウ酸(P-HPP)オキシダーゼ値が改善され,しかもCoQ10は還元型でその効果を一層発揮すること,及びアスコルビン酸はCoQの還元型維持に必要であり,両者の併用により正常のチロジン代謝を維持しうることを報告している.わたくしたちの教室では膠原病にフェニールアラニン,チロジン代謝異常が存在していることをすでに報告している関係上,CoQとアスコルビン酸の併用投与が膠原病の治療に役立つのではないかとの推測のもとに,CoQ7(TCO武田)とビタミンCを併用投与し,又他の難治性皮膚疾患に対してもこれらを併用投与し,一定の成績をえ,又CoQ7の治験中,特にコルチコステロイド併用投与時に経験した興味ある事実に対し薬理学的基礎実験を行いあわせて各種皮膚疾患の尿中CoQ10排泄量をも測定したのでその成績を報告する.

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