日本皮膚科学会雑誌
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爪白癬の組織学的研究 附 正常爪の組織学的構造
秋葉 弘
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1971 年 81 巻 11 号 p. 1025-

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抄録

爪白癬の組織学的所見はSagher,Alkiewiczら,Hanusovaらの研究により,最近解明されたところが多いが,未だに不明な点を少なしとしない.また研究結果が報告者によつて異なり,われわれの判断を迷わすところもある.一方,海外におけるとはその病原菌の性状の必ずしも同一としない本邦においては未だ本症に関する系統的な組織学的研究の行なわれたことはない.爪白癬について組織学的研究が少ない理由は,一般にその組織標本作製が技術的に困難であると考えられていることのほかに,白癬菌は苛性カリ標本によつて証しやすく,正しい診断を容易に下しうるので,安易な診療の域に止まつてきたためと思われる.しかし爪白癬において白癬菌の爪における寄生状態の闡明は組織標本においてのみなされるのは当然である.他部の表在性白癬に比較して,一般にきわめて難治である爪白癬に対して適切な治療を行なうには,爪における白癬菌の分布部位,寄生態度および組織反応などについての正しい理解を必要とする.著者はかかる見地から本邦における猩紅色菌による爪白癬について,その組織学的変化を臨床症状と比較しつつ検索した.さらに白癬罹患爪の対象として正常人爪の組織学的構造をもあわせて検査した.正常爪の組織像についての報告は欧米において少なくないが,日本人についての詳細な記載は未だみられないからである.

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© 1971 日本皮膚科学会
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