日本皮膚科学会雑誌
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苺状血管腫の組織学的,電子顕微鏡的研究
増田 三千男
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1971 年 81 巻 4 号 p. 264-

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抄録

皮膚科領域における血管腫瘍を,北村らは,1)血管腫,2)広義の血管芽細胞腫に分け,後者を更に狭義の血管芽細胞腫(中川),血管内被細胞腫,血管外被細胞腫に細分している.一方,1)血管腫については従来臨床的にも組織学的にも種々の分類が行なわれていたが,今日では次の如きLeverの3型分類が慣用されている.すなわち単純性血管腫(portwine nevus):皮膚面より隆起しない毛細血管拡張性のもの,苺状血管腫(strawberry mark):皮膚面より半球状結節状ないし丘状隆起し鮮紅色,紫紅色で苺状にみえるもの,海綿状血管腫(angioma cavernosum):深在性ないし皮下血管腫に相当するものに分けている.就中苺状血管腫(以下S.B.M.と略称)が自然に消褪する事実はListerが報告して以来多くの研究者によつて確認され,1)成長期,2)静止期,3)消褪期の経過をとることが知られている.臨床上S.B.M.には苺状の典型疹を示さず,一見単純性血管腫を思わせる症例もある.しかし幼児における単純性血管腫の組織像はほとんど血管拡張を認めず正常皮膚と大差がない点により鑑別できる.一方海綿状血管腫のかなりの症例も自然治癒傾向を示すという報告もある.しかし全く自然治癒傾向を認めないとする者もあり,現在まで一定の結論は出ていないようである.またその組織像もSchnyderは薄い一層の壁よりなる海綿状の管腔の小葉状集合よりなり,内被細胞増殖はほとんどないと記載し,水谷は未熟な管腔形成の不完全なものよりなるとしており,この両者の見解は全く相反している.以上を総合すると皮下に腫瘤を有する血管腫中にはS.B.M.とangioma cavernosum(Lever)の両者が含まれるようである.この理由により私が本研究において資料症例として使用したS.B.M.では皮下に腫瘤を有する水谷のいわゆる皮下型は除外し,局面型(第1図)のみを対象とした.S.B.M.の組織学的研究は数多く報告されており,電顕的観察もすでに発表されている.しかしながらS.B.M.の発症より自然治癒に至る過程を組織学的に追求した報告は,私の知る限り文献的には存在しなかつた.この自然治癒機転を解明するために行なつたS.B.M.の成長期消退期および本疾患の特殊な状態と考えられるKasabach-Merritt症候群のそれぞれについて光学顕微鏡的,電子顕微鏡的に研究した結果,さらにこれらと対比する意味で行なつた正常皮膚細小血管(毛細血管,細小静脈)の微細構造について知見を報告する.

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© 1971 日本皮膚科学会
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