日本皮膚科学会雑誌
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モルモットにおける重クロム酸カリ接触過敏症の遺伝支配について
佐藤 和三高野 祐策吉永 和恵藤田 恵一
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1976 年 86 巻 13 号 p. 863-

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抄録

K2Cr2O7 の 1 mg/kg 体重を CFA とともに,モルモットの筋肉内に注射し,14日後,皮表テストを試み,K2Cr2O7 接触過敏症(以下, Cr-CD と略す)の遺伝的背景と,さらに同過敏症と GPL-A (モルモット白血球抗原.以下,括弧内は表現型を示す)との相関について検索した. 1.非近交系における Cr-CD の陽性率(陽性動物数/被検動物数)は,無選択動物が 21/36 であったのにたいし,(AD)同型接合体の兄妹交配を4代以上重ねた AD-1 家系は 0/10 , 同じく AD-2 家系は 1/6,(B)×(ABD) に由来する (B) 同型接合体から成る B 家系は 0/11 であった. 2.近交系にあっては, Hartley-F (AD) の 16/16,Strain 13(B) の 0/11, JY-2 (AC) の 2l2,JY-1(AD) の 1/1の結果を得た. 3. Cr-CD発現と GPL-A との相関を究明する目的のため,以下の cross breeding による観察を行った. (JY-1× Strain 13) 系統の F1 から F4. まで,十(F1×Strain 13) back crossと, (Hartley-FxB 家系動物)系統の Fl, (Fl ×両親) back cross の構成動物について追求した結果, Cr-CD を発現した近交系親動物の haplotype ad を担う(AD),(ABD)動物は必ずしも Cr-CD を発現せず,むしろ代が下るにつれ発現動物数は減少した. 本実験において,動物は所属する strain や家系によって,K2Cr2O7 による皮表テストにたいし,陽性か陰性のいずれか一方に反応した.モルモットの Cr-CD 発現の背景には,遺伝的要因が強く影響する.しかし crossbreeding の実験結果は,同過敏症にたいする感受性と GPL-A との相関を明らかになし得ず,発現にいたる過程には,関与する種々の機能を規定する多くの遺伝子が介在することを推測せしめた.

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© 1976 日本皮膚科学会
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