日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
尋常性白斑におけるPUVA療法後の色素再生部の毛嚢メラノサイトに関する研究
福田 繁
著者情報
ジャーナル 認証あり

1979 年 89 巻 5 号 p. 355-

詳細
抄録

尋常性白斑において PUVA 療法によって現われる毛孔一致性色素再生部における色素再生の機構を解明することを目的とし,21例の白斑患者について,治療前の白斑. PUVA 療法によって現われた毛孔一致性色素再生部・反対側正常皮膚の各部位における毛嚢周囲表皮と毛嚢上皮のドーパ陽性タラノサイトの数を検索し,相互に比較した.また,色素再生部の毛嚢上皮における樹枝状細胞を電子顕微鏡的に観察した.得られた成績は以下のようである.色素再生部におけるメラノサイト数(平均値)を正常皮膚のそれと比較すると,毛嚢周囲表皮では前者か後者の 0.3 倍,毛嚢 A 部では0.4倍,同 B 部では15倍であったが,同 C 部と D 部では有意差がなかった.色素再生部における数(平均値)を白斑部のそれと比較すると,毛嚢周囲表皮・毛嚢 A 部・ B 部・ D 部では前者が後者よりも著しく増加していたが, C 部では有意差がなかった.以上の事実は,白斑内の毛孔一致性色素再生の早期に,毛嚢 B 部に過剰なメラノサイトが存在することを示している. これらのメラノサイト数を統計学的に処理することにより,色素再生部の毛嚢周囲表皮・毛嚢 A 部・ B 部の各部位のメラノサイト数の相互関係をみると,毛嚢周囲表皮のメラノサイト数が比較的少ない時に毛嚢 A 部と B 部のメラノサイト数は比較的多く,逆に毛嚢周囲表皮のメラノサイト数がより多くなると毛嚢 A 部と B 部のメラノサイト数はより少なくなり,また毛嚢 A 部のノラノサイト数と B 部のそれはほぼ連動して増減する;そういう関係が見出された.次に,色素再生部の毛嚢 B 部にはドーパ陽性メラノサイトのほか indeterminate dendritic cell も存在することが電顕的に見出された.以上の結果から筆者は,尋常性白斑の毛孔一致性色素再生は,毛嚢 B 部の既存の不活性メラノサイトが活性化・増殖し,毛嚢 A 部を経て毛嚢周囲表皮へと移動し,そこで色素を産生することによるものと推定した.

著者関連情報
© 1979 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top