日本皮膚科学会雑誌
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Para-tertiary butyl phenolによる白斑症の研究
余 幸司
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1980 年 90 巻 12 号 p. 1129-

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抄録

Para-tertiary butyl phenol(PTBP)はそれを職業的に取り扱う人の皮膚に脱色素性病変を生ぜしめる. Harding-Passeyマウス黒色腫より抽出精製したtyrosinaseを用いて,その発生機序を生化学的に検索した.その結果,PTBPはDOPA-tyrosinase反応を阻害すること,そしてこの阻害作用はcompetitiveに働いていることを確かめた.更に,こうした阻害作用のメラニン産生細胞内のmelanosome形成に及ぼす影響を,培養鶏胚網膜色素上皮を用い,電顕的に検索した.その結果, PTBPは明らかにmelanosome形成に抑制的に働いており,その抑制作用はstageⅠからⅡ,Ⅲへの成熟過程に強いことが明らかとなった.この所見はPTBPによるtyrosinaseとmelanosomeの基本構造を含む蛋白合成の障害及びtyrosinaseに対しcompetitive inhibitor の作用に基づくものと考えられる.

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© 1980 日本皮膚科学会
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