抄録
高分子デキストラン硫酸を高コレステロール血症家兎および正脂血症家兎皮内に局注してヒト黄色腫類似病変を作成し,経時的に電子顕微鏡で観察した.特に黄色腫細胞内の脂質穎粒に注目し,黄色腫組織のコレステロール,コレステロールエステルの代謝と対比しながら lipiddroplet に至るまでの経時的変化を観察し,以下の結論を得た. 1)黄色腫細胞はライソゾームの豊富な組織球由来である. 2)黄色腫細胞内に蓄積された脂質はそのほとんどが血中由来であり,細胞内に取込まれた脂質はライソゾームに融合し水解処理される. 3)取込まれた脂質が加水分解されるにつれ一次ライソゾームは二次ライソゾームとなり,これで生じたコレステロールが再エステル化されるとともに,最終的にはコレステロールエステルで満たされた lipid droplet が形成される. 4)著者の観察した黄色腫細胞および脂質穎粒は,他の黄色腫そして粥状動脈硬化症でもほぼ同じように観察されている. 5)黄色腫細胞の形成因子は単一でなく,その起源細胞の状態,取込まれる脂質の量・質など多くの要因が複雑にからみあっていると考えられる.