Hailey-Hailey 病(HHD)及び Darier 病 (DD)における病変部,及び前者の外観上正常と思われる部の皮膚を体外培養し,組織原片から遊出する表皮細胞(Kc)を正常人(Nc)及び尋常性天疱瘡患者(PV)のそれと比較し,走査電顕により観察した. I ) Falcon dish(Fd)面に直接培養した場合, Nc, PvからのKcは極めて非薄扁平なシートを形成,その表面はほぼ平滑で,ごく薄い被膜状の物質に覆われた構造を示した.これに対して HHD 及び DD のそれではKcは一部扁平なシートの形成の外,顕著な解離性を示し,その多くは中央半球状に隆起,或いは球状を呈し,大部分表面波紋状の構造を示していた. n) Fd面に直接培養した後, 0.25% trypsin (Tp)で処理した材料については,上記の形態上の所見の外,Nc, Pv とも表面に明瞭なmicroviHi(mv)を認めた.それらの多くは短小で疎に存在し,その配列は比較的規則的であった.これに対して HHD 及び DD の解離細胞における同様な条件下でのそれは,同じく細胞表面に多数のmvを認めたが,それらは長く,配列も密で,この変化は細胞の解離性に比例したもののように思われた.こうしたmvは屡しば育曲,互に癒着等の変化の外,細胞間を直接連結する像を示し,組織内の変化を或る程度反映していた. II) Fd内ガラス面に培養した HHD の材料では,遊出Kcは一部扁平なシートの形成の外,定型的解離性を示し,無処置のままでもその表面には mv を明瞭に認め得た.それらはシート状遊出部では NC 及び Pc のそれと,解離性遊出部では TP 処理した HHD 及び DD のそれとほぼ同様な所見を示した.以上の結果は, HHD 及び DD における解離性遊出 Kc が,細胞形態のみならず mv の構造においても,シート状遊出のそれとは異る変化を示し,この変化は invivo で起る表皮内のそれを,或る程度反映したものと考えた.
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