日本皮膚科学会雑誌
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爪白癬新治療法の試み:20%尿素軟膏と抗自癬外用剤によるODT
石井 正光濱田 稔夫浅井 芳江
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1982 年 92 巻 7 号 p. 737-

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抄録

爪自癬においては, griseofulvin の登場以来,その内服療法か治療の主流をしめているが,内服期間が年余にわたる場合が多く,胃腸障害,頭痛などの発現により患者が内服を休止して目的を達し得ないことがしばしばみられる.またより重篤な副作用もとぎにみられたりして,有効な外用療法の開発が望まれるところである.従来の抗白癬外用療法が不成功に終るのは罹患爪甲の角質が有効成分の吸収を妨げるためであると考えられる.著者らは尿素軟膏か爪甲を浸軟させることに着目し,抗白癬外用剤と併用することにより,その爪内吸収が著しく高まるであろうと想定,これにより爪白癬の非経口,非外科的治療が可能になると考えた. 臨床的に爪自癬と診断し,鏡検で菌要素を確認し得た20症例の罹患爪甲に対して,連日ナフチオメートT(トルナフテート)含有軟膏と 20% 尿素軟膏を二重塗布し,その上から ODT を施行した結果,まず爪甲の浸軟化が20例中17例に認められた.次いで1~2週間で爪甲剥離を合併してくるのがそれら17例中7例で,これは主として,罹患爪甲の肥厚,混濁が顕著な場合に限られていた.剥離した爪甲はできるだけ短く切除して,さらに ODT を継続させ,爪甲浸軟化のみの場合と同様に1~数カ月間続けて,新生爪甲が肉眼的に他の罹患していない爪甲と同様の正常度をもつようになるのをまち,鏡検にて菌要素の陰性化を確認して治癒とした.その結果,有効14例,やや有効1例,無効5例で,ほぼ満足すべき成績が得られた.また,刺激,疼痛,出血,感染などの副作用は全く認められなかった.

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© 1982 日本皮膚科学会
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