日本皮膚科学会雑誌
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Eccrine Ductocarcinomaの1例とそのフリーズ・フラクチャー電顕像
清島 真理子北島 康雄森 俊二
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1983 年 93 巻 11 号 p. 1157-

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抄録

46歳男性の後頭部に生じた eccrine ductocarcinoma の1例を報告した.手拳大で,中心に潰瘍を伴う噴火口状の腫瘤であった.組織学的に表皮直下より真皮深層にわたり,大小さまざまの cyst を形成した腫瘍細胞巣がみられた.また,腫瘍塊の一部が表皮と連絡している所が観察された. cyst の壁は核の大小不同,濃淡,変形, pyknosis,核分裂像が見られ,強い異型性を示し,配列の乱れの強い細胞で構成されており,その中に,小型で,核の濃染する細胞が同心円状に配列し,中心が管腔状となった,汗管様の構造物がみられた.腫瘍細胞周囲の間質には,腫瘍細胞が,1個ずつ,あるいは数個が塊をなして浸潤していた.本症例について,フリーズ・フラクチャー電顕による観察を行ない,次の所見を得た. (1)デスモゾーム (desmosome)は多数みられたが,やや不規則な形を呈し,大きさのばらつきが大きかった. (2)裂隙接合 (gapjunction) は小型で発達が悪かった. (3)糸粒体 (mitochondria),小胞体 (endoplasmic reticulum) の発達がよく,微絨毛 (microvilli) , 胞飲小胞 (pinocytoticvesicle), 小胞構造 (vesicular component),小管状構造 (tubular component) が多数観察されたが,トノフィラタント(tonofilament)はまばらであった.(4)腫瘍細胞が隣りあった細胞の細胞内へ互いに細胞突起を陥入させ,入り組んだ構造をとっていた. これらの所見から,本腫瘍の発生起源として真皮内および表皮内エクリン汗管由来であり,その主体は真皮内エクリン汗管にあると考えた.また,分化の程度を考え合わせ, eccrine ductocarcinoma と診断した

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© 1983 日本皮膚科学会
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