日本皮膚科学会雑誌
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93 巻, 11 号
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  • 高橋 千恵, 喜納 辰夫, 矢野 勝喜, 桂 義元
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1141-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    TNP (trinitrophenyl) 化同系マウス脾細胞と完全フロイソドアジュバントを混合して尾根部に免疫したマウスからリソパ節細胞を採取し,放射線照射をした TNP 化牌細胞を添加しつつ2週間培養し,その後7週間にわたって,放射線照射した TNP化牌細胞,TNP 化 HGG(ヒトガソマグロプリン)および TCGF(T・cell growth factor, Interleukin 2) を添加しつつ長期培養を行った.培養細胞は順調に増殖し,TNP 化牌細胞に対し footpad test で DTH(遅延型過敏症)活性を示し,またヘルパー活性も保持していた.この細胞を限界希釈法を用いてクローン化し,約20個のクローンを得た.このうち比較的増殖力の旺盛な4つのクローン(No. 1, 2, 3, 4)につきヘルパー活性をしらべたところ,すべてがヘルパー活性を有していた.No.1とNo. 2のクローソでは,放射線照射した TNP 化牌細胞と TCGF の存在下で核酸合成を測定したところ,ともに著明な 3H・thymidine とりこみを示した.またNo. 1のクローンを TNP イヒ牌細胞とともにマウスの footpad に注射したところ,明らかな DTH 反応を呈した.以上 ,TNP 特異的T細胞クローンでの実験から, TNP 特異的 DTH を媒介する細胞と, TNP 特異的ヘルパー T 細胞とが同一の細胞である可能性が強く示唆された.
  • 長島 典安
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1149-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    蛍光法 (Falck & Hillarp) は黒色腫細胞のメラニン産生能の証明に有用な一方法であるが,手技が複雑であって,標本を作製するまでには比較的長時間を要するとの難点があった,この難点を解決すべくスタンプ蛍光法を開発した.すなわち,黒色腫病巣から作製したスタンプ・スメア標本をフォルムアルデヒド・ガスで10~20分間処理して,直ちに蛍光顕微鏡下に観察する方法で,所要時間は30分以内である.蛍光顕微鏡下では特異蛍光は黒色腫細胞の細胞質にほぼ限局して認められた. melanotic な黒色腫例ではいまだ成功率が高くなく,改善すべき余地が残されているが,診断に苦慮することが多い amelanotic な黒色腫例では,全例,特異蛍光を発する腫瘍細胞の存在を容易に確認しえた.以上の結果からスタンプ蛍光法は黒色腫細胞のメラニン産生能を迅速かつ簡易に証明しうる有力な一方法であると考えた.
  • 清島 真理子, 北島 康雄, 森 俊二
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1157-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    46歳男性の後頭部に生じた eccrine ductocarcinoma の1例を報告した.手拳大で,中心に潰瘍を伴う噴火口状の腫瘤であった.組織学的に表皮直下より真皮深層にわたり,大小さまざまの cyst を形成した腫瘍細胞巣がみられた.また,腫瘍塊の一部が表皮と連絡している所が観察された. cyst の壁は核の大小不同,濃淡,変形, pyknosis,核分裂像が見られ,強い異型性を示し,配列の乱れの強い細胞で構成されており,その中に,小型で,核の濃染する細胞が同心円状に配列し,中心が管腔状となった,汗管様の構造物がみられた.腫瘍細胞周囲の間質には,腫瘍細胞が,1個ずつ,あるいは数個が塊をなして浸潤していた.本症例について,フリーズ・フラクチャー電顕による観察を行ない,次の所見を得た. (1)デスモゾーム (desmosome)は多数みられたが,やや不規則な形を呈し,大きさのばらつきが大きかった. (2)裂隙接合 (gapjunction) は小型で発達が悪かった. (3)糸粒体 (mitochondria),小胞体 (endoplasmic reticulum) の発達がよく,微絨毛 (microvilli) , 胞飲小胞 (pinocytoticvesicle), 小胞構造 (vesicular component),小管状構造 (tubular component) が多数観察されたが,トノフィラタント(tonofilament)はまばらであった.(4)腫瘍細胞が隣りあった細胞の細胞内へ互いに細胞突起を陥入させ,入り組んだ構造をとっていた. これらの所見から,本腫瘍の発生起源として真皮内および表皮内エクリン汗管由来であり,その主体は真皮内エクリン汗管にあると考えた.また,分化の程度を考え合わせ, eccrine ductocarcinoma と診断した
  • 青木 清子, 鈴木 啓之
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1167-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    稀有な爪疾患である先天性異所爪の2例を報告した.症例1では,光顕所見は,先天性異所爪が単に正常爪を小型にしたものではない事を示した.電顕では,爪母のケラチノサイトに球形のケラトリアリン顆粒,細胞質内デスモゾームなどが観察された.症例2では,先天性異所爪び正常爪の爪甲は,ほぼ同じ硬さを示した.これらから,症例1の爪甲の発育方向は正常爪甲と対応すると,皮表に対して水平方向から垂直方向へ回転していると考えられる.
  • 岡本 祐之, 堀尾 武, 今村 貞夫, 泉 孝英
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1173-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    皮膚病変を伴うサルコイドージス患者の血清 angiotensin-converting enzyme 活性値を,1)皮膚病変を伴わないサルコイドージス患者,2)いわゆる皮膚サルコイド反応を有する患者のそれと比較した. 皮膚病変を伴う例では,最低値35単位,最高値161単位を呈し,平均値は 61.7±16.0 単位であった.このうち肺病変 I 期群では, 49.9±7.2 単位,II 期群では 60.3±9.3 単位と後者にやや高値が認められた.いずれも健常人 (35±9単位) と比較し,明らかに高い傾向を示した.しかし,皮膚病変を伴わないサルコイドージスとの比較では,平均値および肺病変の病期別値においていずれも有意の差はなかった.このことから,本酵素は皮膚病変の有無にかかわらず,サルコイドージスの肺病変活動期に上昇する傾向を示すものと考えられた.一方,いわゆる皮膚サルコイド反応では,平均値 38.7±10.3 単位で,全身に系統的にサルコイドージス病変が存在しない場合には,概して正常に近い値をとるものと思われた.
  • 前田 学, 森 俊二
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1177-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    75歳および49歳男性の亀頭部に生じた erythroplasiaof Queyrat (EQと略)の2例を報告し,あわせて本邦で報告された61例の EQ にっき集計を行い,自験例と文献例より EQ の臨床的特徴,組織像,鑑別診断,予後,治療および EQ の独立性などを考察した.要約すると, 1)男性に多く,60歳代に多い. 2)鮮紅色ないし紅褐色調を呈し,わずかに皮膚面より扁平隆起した臨床像を取り,表面はビロード状ないし平滑で境界鮮明である.男性は亀頭部に最も多く,女性は大,小陰唇に多い. 3)組織像では Bowen 病に類似し,表皮肥厚,錯角化を認め,穎粒層は減少し,有無層の配列はやや不規則で,大小不同,時に核分裂像を見るが, Bowen 病に比べ,個角化の少いことや,主に有辣層ド半部に異型細胞が見られることが多い点が異る. 4)合併症として SCC などの癌が13例,白板症が7例,コンジローム様癌前駆症が3例に見られた. 5)治療は切除術や陰茎切断術,抗癌剤,X 線療法などであるが,再発が10例に見られた. 結論として EQ は臨床的並びに組織的な特徴より,独立の疾患単位として扱うのが妥当と考えられる.
  • 古江 増隆, 山下 雅知, 大原 国章, 玉置 邦彦
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1189-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    Paget 病における carcinoembryonic antigen(CEA) 及び β2 microglobulin (β2m) を peroxidaseantiperoxidase 法にて,パラフィン包埋切片を用いて免疫組織学的に検索し,他の皮膚悪性腫瘍と比較検討した.更に陰部 Paget 病患者血清中の CEA を測定し,共にその臨床的症状と比較した.陰部 Paget 病では,Paget 細胞は CEA 陽性,病β2m 陰性の所見を呈し,これらはリンパ節に転移した浸潤細胞でも,また乳房 Paget 病でも同様であった.他の基底細胞上皮腫,Bowen 病,有棘細胞癌では CEA , β2mのいずれも陰性であった. Paget病患者血清中の CEA は,広範囲転移をきたした例で上昇をみた.以上の所見から Paget 細胞による CEA の産生が強く示唆され,CEAの検出がPaget 病の浸潤の範囲,広範な転移の有無を決定する上で有用であることを示しているものと考えた.
  • 篠田 英和
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1195-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    皮膚上皮性腫瘍組織に acid α-naphtyl acetateesterase (ANAE) 染色を行い,①上皮性皮膚腫瘍組織に T リンパ球の浸潤がみられるか否か, ②もしみられるとすれば,腫瘍の種類,悪性度などとの間に一定の関連,浸潤パターンなどの相違があるか否か,などの検討を行い次の結果を得た. 1)脂漏性角化症では,腫瘍巣周囲に散在性にわずかな T リンパ球浸潤を認めたにすぎず,検討症例群で最も軽度の T リンパ球浸潤であった. 2)有棘細胞癌では,腫瘍巣に浸潤するリンパ球の約 80% は T リンパ球で,腫瘍に直接接する部分が多く認められたが,一部では,マクロファージの浸潤層外側に浸潤する部位もみられた.また巣内に侵入する T リンパ球も少数認められた. 3)基底細胞上皮腫では,T リンパ球の浸潤は,有棘細胞癌,ケラトアカントーマに比して軽度であるが,浸潤リンパ球の 80% 以上を占めていた.本腫瘍における特徴的所見は,腫瘍巣との間に T cell free の zone が存在し,組織型によって浸潤の強さが異っていることであった.すなわち, solid 型で最も著しく, morphea-like 型で最も軽い浸潤であった. 4)ボーエソ病では,T リンパ球の浸潤は基底細胞上皮腫の solid 型とほぽ同様の強さであり,腫瘍巣に密着する部分,T cell free の zone を呈する部分などがみられた. 1)~4)の所見から,生体は悪性腫瘍に対して,その大小を問わず T リソパ球を動員してその排除に努めていることがわかった. 5)ケラトアカソトーマでは,T リンパ球の浸潤は検討症例群で最も強く,腫瘍巣に密着し,巣内に多数侵入する像が観察された.
  • 長谷 哲男
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1207-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    我々は,卵白リゾチーム (HEL) 特異的T細胞増殖反応に対する特異的抑制活性を持つ因子を産生するT細胞ハイブリドーマ 5104-2 株を樹立した.この T 細胞性抑制因子は HEL 感作 C3H/He マウスのリンパ節の増殖反応を特異的に抑制した.さらに,この抑制因子は HEL に対する結合能と I-J 抗原を有した.またこの T 細胞ハイブリドーマは HEL 感作高反応系 C3H/He (H-2k , IghJ) マウスのリンパ節 T 細胞と AKR(H-2k,Ighd)胸腺腫 BW5147 株とを細胞融合することにより樹立した.
  • 倉田 三保子, 西岡 和恵, 麻上 千鳥, 藤田 英輔
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1219-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    昭和52年1月始めから同57年10月末までに当科化粧品外来を受診した女子顔面黒皮症の62例に対して化粧品成分及び使用化粧品の貼布試験及び転帰の調査を行い,以下の結果を得た 1)化粧品成分貼布試験で何らかの被検物質に陽性を示した症例は62例中26例 (41.9%) であり,また何らかの香料素材あるいはタール系色素陽性例はそれぞれ14例 (22.6%) であった. 2)香料素材では特に高陽性率を示すものはなかったが,タール系色素では PAN 及び R-219 に陽性率が高かった. 3)使用化粧品貼布試験の陽性率は 28.8%(59例中17例)で,各化粧品における陽性率に差は認められなかった. 4)転帰は治癒 21%, 著明に軽快 31% ,軽快 31%, 不変 17% で予後は良好と考えられた.
  • 石井 正光, 浅井 芳江, 漬田 稔夫
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1227-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    抗ケラチソ抗体を用いた酵素抗体法(PAP法)により12例の lichen amyloidosus, 12例の macularamyloidosis 及び7例の biphasic amyloidosis の計31例について検索を行なったところ,すべての症例においてアミロイドは陰性に染色された.この結果は今迄蛍光抗体法を用いて報告されて来た陽性説に合致せず,アミロイドの起源考察の上で興味ある所見と考えられる.
  • 玉田 康彦, 高間 弘道, 滋野 広, 水野 栄二, 池谷 敏彦
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1233-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    Nail-Patella 症候群2例の指爪の生検を行ったところ,HE 標本で正常爪表皮には認められない穎粒層が爪母,爪床の全長にわたり存在していた.穎粒層は15~16週齢の胎生期の爪母原基に観察される.又猿を用いた実験で爪母を切除し,爪床のみで形成された爪甲にも認められる.これらのことから本疾患の爪の形成異常は胎生期に爪の原基は形成されるが,それから爪母の細胞への成熟過程で何らかの障害が生じ,完全な爪母の形成がなされていないのではないかと考える.
  • 野村 洋文, 蜂須賀 裕志, 阿部 順一, 森 理, 笹井 陽一郎
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1237-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    分離した表皮細胞を,コロイド状シリカ (Perco II) の密度勾配により分画した.表皮細胞の分離は,EDTA 処理により剥離した表皮を 0.25% Trypsin で20℃,20分間処理することによりおこなった. Perco II の密度勾配により, high density fraction (HDF,比重1,088以上), intermediate density fraction (IDF,1,050~1,088) lower density fraction (LDF, 1,050以下)の3つに分画された細胞ついて, Giemsa 染色により形態及び顕微蛍光測光により核 DNA の検索をおこなった.また末梢リンパ球につき表皮細胞と同様に処理して対照とした.その結果, HDF は基底細胞, IDFは有棘細胞, LDF は顆粒細胞が優位で,DAN 量もほとんど影響がないことを知った.
  • 森 理, 野村 洋文, 蜂須賀 裕志, 笹井 陽一郎
    1983 年 93 巻 11 号 p. 1241-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    ウシの脳より抽出した S-100 蛋白でウサギを免疫し,抗 S-100 蛋白抗体を作製した.この抗体を用いて,PAP 法によりヒト正常皮膚における神経系について検索した.その結果, Meissner 小体の薄板細胞, Vater-Pacini 小体内梶の薄板細胞,汗腺周囲および立毛筋線維間の神経線維ならびに血管に伴走する神経線維が染色された.他方,対照として用いたラットの坐骨神経では, Schwann 細胞に一致して S-100 蛋白が存在するのが認められた.この染色法は,簡便で,しかも再現性があり,皮膚の神経系の検索に有用と考える.
  • 1983 年 93 巻 11 号 p. 1245-
    発行日: 1983年
    公開日: 2014/08/20
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