日本皮膚科学会雑誌
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砒素の発癌促進作用の電顕的研究
服部 晃一郎
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1983 年 93 巻 6 号 p. 659-

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抄録

文献上でみると,砒素角化症は長い経過で Bowen 病へ移行するのが常である.現在までに砥素の変異原性を調べる実験もなされているが,実験腫瘍ができていないことがわれわれに発癌性の確証を与えない原因であろう. 癌原性芳香族炭化水素, 9,10-Dimethyl-1 ,2-benzanthracene で initiation (前処置, DNA の損傷)を施した C57BL/ 6 マウスに 0.02% As2O3 水溶液を2年間継続投与すると丘疹状角化腫ができる.この組織像は人体にみる砒素角化症に近い.暗調細胞がでてくるが,これは, Slaga らにより表皮細胞の転換 (conversion) の本態であるとみなされている. 次に,末処置マウスを同じ水溶液で2年間飼育すると,有無細胞の核小体とケラトヒアリン顆粒の中に類似した多数の高電子密度の顆粒が見出されることがある.生化学的な資料が無いが,枇素が rRNA のプロセシング過程にある粒子に何らかの変化を与え,それが緩徐な発癌促進作用と関連があるのではなかろうかと推察した.

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© 1983 日本皮膚科学会
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