日本皮膚科学会雑誌
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角層水分含有機能に及ぼす皮表脂質の影響について―エーテル脱脂後の皮表における解析―
吉国 好道
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1984 年 94 巻 11 号 p. 1253-

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抄録

皮表脂質の有用性については種々の議論がなされているが,ここでは角層の重要な機能である水分を保持する働きに,皮表脂質が実際上どのような影響を及ぼしているかを調べた.脂漏部位として前額部と頬部を,非脂漏部位として前腕を選び,エチルエーテルを溶媒とするカップ法により皮表脂質を除去し,3.5MHz高周波伝導度測定装置を用いて角層の水分含有量,水分吸収能,水分保持能の変化を経時的に測定し,検討した.また同時にEvaporimeterRを用いてwater loss by evaporation(WLEv:経表皮的水分喪失と汗の和)の変化をも検討した.すなわち,エーテル処理により,1)角層の水分含有量と水分保持能は低下し,水分吸収能は亢進した.2)水分吸収能,水分保持能の変化は頬部,前額部では大きく,前腕では小さかった.3)WLEvの上昇は,前腕ではほとんど観察されなかったが,前額部と頬部では著明であった.以上より,皮表脂質は膜として,あるいは角層細胞間に浸透することにより,角層が過度に大気中の水分を吸収したり,あるいは逆に下方よりの水分を喪失することを防ぐ役割を果たすものと結論した.

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© 1984 日本皮膚科学会
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