1986 年 96 巻 11 号 p. 1133-
60歳男性の下眼瞼に生じた伝染性軟属腫の1例を報告し,そのSH基特異的蛍光染色(DACM染色)所見について検討した.初診時の臨床所見からは確定診断が困難であったため,全摘術を施行した.組織学的には,細胞質内に特徴的な封入体(いわゆるモルスクム小体)を認め,典型的な伝染性軟属腫であった.DACM染色所見では,周辺正常部においては,特記すべき所見はみなかったが,病変部では,モルスクム小体に一致してSH基およびSS結合による強い蛍光を認めた.更には,病変部の表皮細胞質内に,SH基染色では染まらず,SS結合に富む微細顆粒が観察され,この顆粒はHE染色で好塩基性に染色されるケラトヒアリン物質の凝集する部位に多く分布する傾向を示したが,一致しては認められなかった.