フローサイトメトリーにより測定されたS期細胞の分画(S分画)およびG2+M期細胞の分画(G2+M分画)の値,プロモデオキシウリジン標識指数および核分裂指数を指標として,中波長紫外線(UVB)1,2,4J/cm2照射後のモルモット表皮における細胞動態の変動を検索した.UVB1J/cm2照射部表皮では,S分画およびG2+M分画の値はそれぞれ6時間後および12時間後まで対照値と有意に異ならなかったが,S分画の値は12時間後から,G2+M分画の値は24時間後から,いずれも有意に増加した.標識指数および核分裂指数はそれぞれ2時間後および24時間後まで対照値より有意に低下したのち,標識指数は12時間後から,核分裂指数は48時間後から,いずれも有意に高くなった.なお,UVBの照射量が1~4J/cm2の範囲内では照射量の増加とともにS分画およびG2+M分画の値の増加時期はより遅くなることが示された.得られた成績から,UVB照射により細胞周期の各期の境界で完全またはほとんど完全なブロックが起こること,次いでG1-S境界でのブロックの解除後G1期の短縮によるS期への細胞流入の増加とS期細胞におけるDNA合成の亢進が起こることが推測された.また,UVB照射後比較的長く継続するM期への進行阻害によりG2期での細胞蓄積が起こることが示唆された.なお,この実験で照射されたUVB量の範囲内では,照射量が増加するとともにG1-S境界でのブロックの解除がより遅くなるように思われた.
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