抄録
ラットの側腹部から種々の厚さで皮膚を採取し,それぞれについて37℃,純酸素1気圧下で皮表からの酸素の拡散および皮内での消費を,真皮側においたPo2電極を用いて検討した.その結果,正常皮膚では試料内に拡散した酸素は,厚さ0.4mmで全て消費された.また角層除去,表皮除去,アモバルビタールナトリウム前処理を施した試料についても測定を行なった結果,いずれも酸素は無処置の試料より深部に浸透し,アモバルビタール前処理で最大で,表皮除去がこれに次ぎ,角層除去と続いた.また簡単な理論モデルを考えることにより,試料全体の平均的な酸素の拡散係数および消費率が酸素の浸透しうる深さに与える影響について記述し,下腿潰瘍の治療に近年試みられている高圧酸素療法局所法の解析への応用に言及した.