1986 年 96 巻 7 号 p. 719-
上皮成長因子(RGF)のヒト皮膚線維芽細胞(HSF)とヒト胎児肺線維芽細胞(HEL)に対する増殖,DNA合成,ならびに蛋白合成効果を調べた.さらに,これらの作用がジヒドロテストステロン(DHT)により培養系においても生体内と同様に影響を受けるか否か,及びその程度を明らかにする為に増殖細胞数,細胞への3H-チミジンおよび3H-プロリンの取り込み量を測定した.培養細胞へのEGFの添加はHSF,HELにおいて,ともに細胞数,チミジン取り込み量の増加をEGF濃度依存性に認めた.これにDHTを添加すると,さらにチミジンの取り込み量が増加した.一方プロリンの取り込みに対してはEGFはまったく影響はなかった.しかしながら,これにDHTを添加することによりプロリンの取り込み量は増加した.以上の結果から,EGFは培養HSFおよびHELに対してDNA合成と細胞の増殖を促進させる効果があり,DHTはさらにこれらの効果を促進させることがわかった.また,これらの線維芽細胞に対してEGFはプロリンの取り込みによる蛋白合成の促進効果はなかった.しかしDHT添加により,蛋白合成の促進効果が出現することがわかった.