日本皮膚科学会雑誌
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皮膚粘膜部単純ヘルペスの疫学的研究―主病巣以外で感染源となりうる部位の検索―
吉田 正己
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1986 年 96 巻 7 号 p. 737-

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抄録
皮膚粘膜部単純ヘルペス患者40例について主病巣に関連ある部位またはそれらの部位の分泌物からウイルス分離を試み,次の結果を得た.初感染例の場合,性的接触の感染様式をとる女性陰部ヘルペス3例と両乳房に生じた単純ヘルペス2例について検索したところ,女性陰部ヘルペスのうち2例に咽頭から,および1例にカテーテル尿から単純ヘルペスウイルス(HSV)1型が分離された.また,疱疹性湿疹4例についても検索したところ,3例に眼瞼結膜,2例に咽頭,1例に鼻腔からHSV1型が分離された.再発例の場合,眼周囲皮膚に生じた単純ヘルペス6例の検索では,6例に眼瞼結膜,2例に鼻腔,1例に咽頭からHSV1型が分離された.また,口唇口囲,鼻,頬部に生じた単純ヘルペス20例のうち,6例に唾液から,3例に咽頭から,2例に鼻腔からHSV1型が分離された.陰茎,臀部に生じた単純ヘルペス5例について前部尿道からウイルス分離を試みたが,結果はすべて陰性であった.以上の結果から,皮膚粘膜部単純ヘルペス患者では主病巣に関連する部位とそれらの部位の分泌も,主病巣と同様に,他の接触者への感染源になりうることが示唆された.
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© 1986 日本皮膚科学会
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