日本皮膚科学会雑誌
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抗ケラチン自己抗体に関する研究(Ⅰ) 乾癬における抗ケラチン線維タンパク自己抗体の定性的解析
青木 重信
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1987 年 97 巻 14 号 p. 1655-

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抄録

イムノプロット法を用い,正常ヒトおよび乾癬患者血清中の抗ケラチン線維タンパク自己抗体(抗ケラチン自己抗体)のサブユニットケラチンに対する反応性の定性的解析を行なった.その結果,正常全表皮ケラチンを基質とし,正常ヒトおよび乾癬患者の20倍希釈血清を反応させ,ペルオキシダーゼ染色により観察したところ,正常ヒト43例中20例の血清に抗ケラチン自己抗体が検出され,反応パターンには4種類が認められた.分子量68,000~63,000ダルトン(以下一般的慣例に従って1,000daltonをkdとして各サブユニットケラチンを~kdケラチンと略記する)ケラチンのバンドが濃染し,56kdおよび50kdケラチンのバンドが淡染する反応パターンをパターンⅠ,パターンⅠとほぼ同様であるが,56kdケラチンのバンドを認めない反応パターンをパターンⅡ,63kdケラチンのバンドのみ濃染する反応パターンをパターンⅢおよび68~63kdと58kdケラチンのバンドが染まる反応パターンをパターンⅣとした.各反応パターンの比率はパターンⅠが1例,パターンⅡが1例,パターンⅢが2例,パターンⅣが16例であった.同様に乾癬患者36例中20例の血清に抗ケラチン自己抗体が検出され,反応パターンには正常ヒトでみられた4種類のうち3種類が認められた.各反応パターンの比率はパターンⅠが2例,パターンⅢが2例,パターンⅣが16例であった.乾癬患者で欠如するパターンⅡについては,パターンⅠを示す乾癬患者血清を20倍希釈から10倍希釈まで濃縮したところ,56kdケラチンのバンドが出現することから,パターンⅠとパターンⅡとの間には本質的に違いはないと判断された.陽性所見が認められたこれら血清中の抗ケラチン自己抗体は正常全表皮ケラチンによりすべて吸収された.正常ヒトと乾癬患者の間で抗ケラチン自己抗体のサブユニットケラチンに対する陽性率,反応パターンおよびその比率に有意差が認められなかった.これらのdataから,①抗ケラチン自己抗体は乾癬に特異的でない可能性があること,②乾癬に特有の反応パターンがないこと,③乾癬の病型と関連する反応パターンがないこと,が判明した.しかし最近抗ケラチン自己抗体のELISA法による定量的解析も行なわれるようになってきており,今後乾癬においてもこの方面からの検討が必要であると思われた.

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© 1987 日本皮膚科学会
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