日本皮膚科学会雑誌
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実験的黄色腫組織におけるコレステロール合成
長尾 洋
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ジャーナル 認証あり

1988 年 98 巻 3 号 p. 345-

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抄録

組織球が泡沫細胞化する過程における細胞内コレステロール合成系を検討する目的で,高分子デキストラン硫酸を皮内注射することにより,正脂血兎には組織球浸潤病変を,高コレステロール血症兎には泡沫細胞浸潤病変を作成し,各々の組織での酢酸を基質とするコレステロール合成とマイクロゾーム分画におけるHMG CoA reductase活性を測定した.正脂血兎の組織球浸潤病変では注射回数を増すにつれて酢酸を基質とするコレステロール合成が高まった.これは,浸潤している組織球の数が増加した結果とも考えられるが,同時にHMG CoA reductase活性も上昇していたことから,コレステロール合成能そのものが高まったためであると考えた.一方,実験的黄色腫病変において組織球が泡沫細胞化すると,組織球の酢酸を基質とするコレステロール合成は低下するが,この低下はコレステロール合成の律速酵素であるHMG CoA reductase活性の低下により直接的にもたらされた結果であると考えた.in vivoにおける組織球の泡沫細胞化に伴ってHMG CoA reductase活性が低下することを明らかにしたが,この抑制効果はコレステロール蓄積量とは相関を示さず,泡沫細胞化の早期から発現すると考えられる.

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© 1988 日本皮膚科学会
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