日本皮膚科学会雑誌
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接触過敏反応の感作誘導期におけるリンパ節内の抗原提示細胞とTリンパ球との研究
森田 秀樹湯 正明宮崎 孝夫
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1989 年 99 巻 10 号 p. 1075-

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抄録

接触過敏反応の感作物質であるfluorescein isothiocyanate(FITC)をマウスの腹部皮膚に塗布すると,その24時間目にFITC+細胞が皮膚所属リンパ節内に出現した.リンパ節内のFITC+細胞は比較的大型の細胞であり,それはTリンパ球とは考えられない.マウス尾部皮膚にFITCを塗布した場合,及び,tape stripping処理を行なった皮膚にFITCを塗布した場合の両群の動物における皮膚所属リンパ節内FITC+細胞数は無処置の腹部皮膚にFITCを塗布した動物におけるそれに比し有意に少数であった.皮膚所属リンパ節とはリンパ流の異なる腸間膜リンパ節内には,上記いずれの実験系においてもFITC+細胞は増数せず,各実験系におけるFITC+細胞数に有意差を認めなかった.Picryl chloride(PCl)をマウスの腹部皮膚に塗布した4日目の鼡径部リンパ節内には,interleukin 2 receptor(IL-2R)を発現するL3T4+細胞は増数した.一方,PClをマウス尾部皮膚に塗布した場合,及び,tape stripping処置を行なった皮膚にPClを塗布した場合には,共に皮膚所属リンパ節内L3T4+ IL-2R+細胞は増数しなかった.腸間膜リンパ節内のL3T4+ IL-2R+細胞数は上記に示すいずれの実験系でも増数しなかった.今回の実験結果は接触過敏反応(CHR)の感作誘導期における抗原提示細胞とTリンパ球,及び,皮膚とリンパ節の関連性について示唆に富むと考えられる.

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© 1989 日本皮膚科学会
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