日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
足底悪性黒色腫原発巣の最大径―予後因子としての検討―
斎田 俊明池川 修一石原 和之
著者情報
ジャーナル 認証あり

1989 年 99 巻 11 号 p. 1167-

詳細
抄録

足底悪性黒色腫の本邦人症例43例について原発巣の最大径,病型,病期,Clark's level,Breslow's tumor thickness,患者の予後を検索,調査した上で,原発巣の最大径と他の因子との相関を検討した.色素斑部を含めた原発巣の最大径は9~70mmに分布し,その平均値(±SD)は32.8±15.9mmであった.臨床病期についてみると,転移の認められないstageⅠが31例,所属リンパ節にまで転移が認められるstageⅡが12例で,stageⅢの症例は1例もみられなかった.UICCの新stage分類では,stageⅠが16例,Ⅱが7例,Ⅲが20例であった.Level分類ではlevelⅠ(mm in situ)が6例,levelⅡが3例,levelⅢが10例,level Ⅳが13例,level Ⅴが11例みられた.mm in situの6例を除く37例の病型別内訳は,末端黒子型26例,結節型9例,表在拡大型2例であった.予後を調査しえた症例は39例であり,このうち26例は転移なしに生存中,1例は転移を有して生存中で,残り12例は原病死していた.原発巣の最大径と他の予後因子(病型,病期,level,tumor thickness)および患者の予後との間の相関を検討したところ,いずれとも有意な相関は認められなかった.ただし,原発巣の最大径が14mm未満のものには死亡例はみられず,また最大径11mm未満の原発巣でlevel Ⅱ以上の深達度を示すものはみられなかった.表在拡大型や結節型を主体とする欧米白人の悪性黒色腫症例では,原発巣の最大径が予後と相関するとの報告がみられる.これに対し,末端黒子型を主体とする本邦人足底の悪性黒色腫では,そのような有意の相関は認められないことが今回の検索にて明らかにされた.この理由は,末端黒子型ではlevelⅠ,Ⅱ程度のtumor thicknessの浅い病変が原発巣内のかなり広い部分を占めることが多いためであろうと推測された.これまでのわれわれの研究や今回の検索結果から判断すると,本邦人に多い足底悪性黒色腫の予後を改善する上で当面最も重要なことは,皮疹の最大径が7mmを越える足底の色素性病変を見逃さぬことと,足底悪性黒色腫を最大径が11~14mm程度までの段階で適切に治療することであるといえよう.

著者関連情報
© 1989 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top