デサントスポーツ科学
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Print ISSN : 0285-5739
研究論文
睡眠に対する運動の効果-睡眠時の自律神経バランスに注目して-
福場 良之遠藤(山岡) 雅子
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2011 年 32 巻 p. 88-97

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抄録

本研究の目的は,夕方に実施した有酸素性運動が,その夜の睡眠の量と質,ならびに運動後約24時間における血圧を中心とした循環機能に及ぼす影響について検討することであった.被験者は10名の健常若齢男性で,運動あり(運動条件)・なし(対照条件)の2条件をランダムに行った.1日目の16時に実験を開始して,2日目の12時に終了するプロトコールであった.運動条件では,実験室で仰臥位30分の安静後,脚自転車エルゴメータで有酸素性運動(運動強度:約50%HRR)を60分間行い,再び仰臥位で60分間の安静回復を保った.その後は自宅での睡眠を含めて通常の日常生活を行うよう指示した.2日目の実験終了時までホルタ心電・血圧計と簡易身体活動・睡眠時間同定装置を,加えて,入床から起床までの就床期間は心拍RR間隔変動解析に基づく睡眠ステージ推定装置を,それぞれ装着した.対照条件は,運動条件の運動に相当する期間を安静におきかえたものとした.簡易身体活動・睡眠時間同定装置から,総睡眠時間(=睡眠時間?中途覚醒時間),入眠潜時といった睡眠の量に関する,睡眠ステージ推定装置から,睡眠中のレム睡眠,ノンレム睡眠(浅い・深い)といった睡眠の質に関するパラメータを,それぞれ推定した.また両条件とも,各被験者では同一の曜日に行い,1日目の昼食と夕食,2日目の朝食は統一したものを提供した.睡眠の量と質に関するパラメータにおいては,両条件の間で,有意な違いが認められなかった.平均血圧に対する運動の急性効果として,運動前の値に対して,運動後45-60分目で有意な低下が生じ,PEHが確認された.睡眠中の平均血圧を検討すると,運動条件では対照条件に比較して,有意に低くなる傾向が認められた.しかし翌日の午前中の値には有意差がなかった.夕方に行う有酸素性運動による血圧低下は,運動終了直後の一過性で急性なものだけでなく,その夜の睡眠中といった亜急性期にも引き起こされる可能性が示唆された.一方,睡眠の量ならびに質に関するパラメータには,運動実施の有無による違いは,基本的に認められなかった.

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