2013 年 34 巻 p. 106-116
スポーツウエアなどの被服の視認性評価については,心理物理量としての客観的な評価方法,特にダイナミックな条件下での評価方法は確立されておらず,被服設計段階においては多くの場合,経験則や静的条件で導かれた配色に依存している状況にある.筆者らは,これまでに迷彩柄など低視認性条件下で,探索時間を指標にした評価方法を提案している1).今回の研究では,この手法をスポーツウエアにおける色,柄の視認性評価に応用することを試みた.また,その結果として次のような結論を得た. ユニフォームの色彩の効果は特定の色彩の組み合わせで認められるが,ウェアの面積,形状,また背景色なども大きく影響するので,色彩のみが試合中の優位性の決定要因とは言い難いであろう.また,特定の競技においては,赤が有利との報告もあるが,誘目性,視認性といった観点からは,そのほかに白や黄といった色彩の優位性にも注目が必要であるといえる. 一方,眼球運動の解析からは,順調に味方を探索できた場合の平常状態と見方を見失った場合のパニック状態の大きく2種の状況が存在し,ある種のパニック状態に陥ったときにはユニフォームの色彩が大きな影響を及ぼす可能性が示唆された.