2014 年 35 巻 p. 140-146
近年になって主流となっているカーボン繊維製のスポーツ用義足の登場は,障害者の積極的なスポーツ参加を促進させた一方,「義足の装着によって不当なアドバンテージを得ているのではないか?」という疑いの目を生じさせた.そこで本研究の目的は下肢関節におけるバネ機能の評価指標として広く用いられているJoint stiffnessを評価することによって,スポーツ用義足の有利/不利に関する論争への視座を得ることであった.8名の片脚下腿切断者に,屋内に設置した一周100mの走路でランニング動作を行わせた.走速度は2.5 m/s,3.0 m/s,3.5 m/sの三段階に設定した.Tosional Spring Modelに基づき,関節モーメントを関節角度変化量で除して関節バネ特性(Joint stiffness)を足関節および膝関節肢から算出し,義足側と非切断側で比較した.その結果,いずれの走速度でも義足側の足・膝関節スティフネスは非切断側と同等かそれ以下の値を示した.これらの結果は,カーボン繊維製のスポーツ用義足が国際陸連の懸念する「技術的措置による競技力向上」に繋がる可能性は低いことを示唆している.