高強度のウォームアップ(W-up)運動を用いると,W-up運動後の主運動における活動筋の酸素消費量(V・O2)の増加が速くなり,酸素不足が減少する.本研究では,表層筋に加えて深層筋も含めた活動筋の酸素動態を計測し,高強度のW-up運動が活動筋の酸素動態に及ぼす影響を明らかにした.時間分解・近赤外分光装置を用いて,活動筋における脱酸素化ヘモグロビン+ミオグロビン(HHb)を計測した.大腿直筋深層部のHHbは第1運動と第2運動の開始後の約5分目において定常状態を示し,V・O2とQ・の増加速度のマッチングが生じたことが示唆された.さらに,第1運動と第2運動において大腿直筋深層部におけるHHbの時定数と平均応答時間は表層部に比べて有意に遅かった.HHbはV・O2/Q・を反映するので,表層筋に比べて遅筋線維が多く含まれ,運動中の筋温がより高い深層筋では,酸素供給が十分になって活動筋全体のV・O2とQ・のバランスが改善され,酸素不足が減少したと推測される.