デサントスポーツ科学
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Print ISSN : 0285-5739
研究論文
体温,発汗を計測可能な機能性繊維の研究
竹井 裕介
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2016 年 37 巻 p. 49-57

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抄録

本研究では,人間の発汗を計測可能なフレキシブルな湿度センサを製作した.本センサは,感湿体として水を吸着しやすい性質をもつEMIMBF4というイオン液体をゲル化したものを不織布および布の繊維表面にコーティングして用いる.本研究では,被コーティング素材として,ベンコットTR-7F(旭化成),キムタオル(日本製紙クレシア),コットン,ポリエステルを使用した.コーティング前後にSEM観察を行ったところ,イオン液体ゲルが繊維の表面および間隙に固定されていることを確認した.イオン液体ゲルをコーティングした不織布および布のインピーダンスを計測したところ,湿度変化に対して線形に変化することが分かった.また,湿度変化に対する応答速度を評価したところ,市販の電気式湿度センサに比べて10倍速く応答することが分かった.これは,本センサのベースが不織布や布など表面積が大きい構造をしていることに起因していると考えられる.また,本センサの柔軟性を確認するため,曲げに対してインピーダンスがどのように変化するかを検証したところ,インピーダンス値はほぼ一定であった.これは,本センサを曲げた際に曲げによる伸びは生じず,繊維が絡まりあう構造に吸収されてしまうためだと考えられる.製作したセンサが人間の発汗を計測できるかを確認するために,ポリエステル製のTシャツの胸部にイオン液体ゲルをコーティングし,被験者が運動時の発汗の計測を行った.その結果,運動に伴う発汗によるTシャツの湿度の上昇,安静にすることにより発汗が止まり,ポリエステル素材の持つ速乾性の特徴によるTシャツの湿度の低下が計測された.本センサは,人間の呼吸の計測のためのマスク型呼気センサや,熱中症のリスク低減のためのウェアラブル発汗センサなどへの応用が期待される.

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