デサントスポーツ科学
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研究論文
超音波剪断波イメージング法によるマラソン後の筋損傷部位および程度の定量~適切なトレーニングおよびリカバリープログラムの作成に向けて~
平田 浩祐宮本 直和
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2016 年 37 巻 p. 58-65

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抄録

これまで,マラソンによる筋損傷の程度は,最大筋力や血中クレアチンキナーゼ活性値の変化などから評価されてきた.しかしながら,これらの方法は個別の筋の損傷を示すものではない.一方,近年,超音波剪断波エラストグラフィを用いた筋の硬度(剛性率)の測定により,個々の筋の損傷の程度を評価可能であることが報告されている.そこで本研究は,この方法を用い,マラソン後の下肢の筋の損傷の程度を定量し,筋損傷がどの部位において生じているのかを明らかにすることを目的とした.被験者は大学生市民ランナー12名とし,超音波剪断波エラストグラフィによる剛性率測定の対象筋は,内側広筋,外側広筋,大腿二頭筋,半腱様筋,半膜様筋および腓腹筋内側頭とし,マラソン前,マラソン終了1~3日後の計4回測定を行った.マラソン後の有意な剛性率の増加がみられたのは腓腹筋内側頭のみであり,マラソン1日後に最も高値を示した.その後,経時変化に伴い筋の剛性率は低下したものの,2日後にはマラソン前に比べ有意な変化が認められたが,3日後には有意な差は認められなかった.これらの結果から,市民ランナーがマラソンを行うことにより,足関節底屈筋に顕著な筋損傷が生じるが,3日後には回復することが明らかとなった.また,膝関節伸展筋および膝関節屈曲筋には大きな損傷が生じないことが示唆された.

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