デサントスポーツ科学
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Print ISSN : 0285-5739
研究論文
高強度運動時に認知機能の低下が起こるのはなぜか−脳血流と脳酸素動態からの検証−
小見山 高明檜垣 靖樹安藤 創一須藤 みず紀
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2017 年 38 巻 p. 207-215

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抄録

高強度運動時の認知機能の低下に関わる要因として,脳血流と脳酸素飽和度が関与している可能性がある.本研究では,15名の健常成人男性(年齢:23.3±1.8歳,身長:1.70±0.06m,体重:64.4±5.8kg,最高酸素摂取量:47.3±6.4ml/kg/min)を対象に,中強度及び高強度の運動中に認知課題を実施し,同時に中大脳動脈血流速度と前頭前野の脳酸素飽和度の測定を行い,高強度運動時の認知機能の低下と脳血流及び脳酸素飽和度の変化との関係性を明らかにすることを目的とした. 高強度運動時には,安静時及び中強度運動時と比較して認知課題の正解率は有意な低下が認められた(安静時:P < 0.05,中強度運動時:P < 0.01).一方で反応時間に有意な差は認められなかった(P = 0.31).脳血流速度は安静時と比較して中強度運動時に増加し(P < 0.01),高強度運動時では中強度運動時と比較して有意な低下がみられた(P < 0.01).脳酸素飽和度は安静時と比較して高強度運動時に低下する傾向が認められた(P = 0.058).従って,高強度運動時の脳血流や脳酸素飽和度の低下は,認知機能の低下に関与している可能性が示唆された.

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© 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団
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