2021 年 43 巻 2 号 p. 168-174
背景.神経鞘腫はSchwann細胞に由来し,末梢神経の存在するあらゆる部位に発生する.しかし,肺・気管・気管支・縦隔での発生は稀である.気管支鏡検査で診断できた神経鞘腫の2例を経験したので報告する.症例1.69歳の男性.健康診断での胸部エックス線写真で異常を指摘され紹介となった.胸部CTで上縦隔に気管左縁に接する約41 mm大の腫瘤を認めた.Endobronchial ultrasonography(EBUS)所見は,辺縁整で内部の輝度が均一で血流は疎であった.22 Gの穿刺針を用いたendobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration(EBUS-TBNA)では,紡錘形細胞が波状,束状に増殖しており,免疫染色でS-100が陽性であり,上縦隔神経鞘腫と診断した.気管の偏位を伴っていたため,腫瘍摘出術を施行した.症例2.48歳の男性.他病経過中の胸部CTで,偶発的に気管膜様部に約10 mm大の腫瘤を認めた.直視下生検で紡錘形細胞が波状に増殖し,一部に浮腫状基質をもつ細胞密度の低い領域を認め,免疫染色でS-100が陽性であり,気管神経鞘腫と診断した.腫瘍は小さく,気道閉塞症状はないため,患者の希望を考慮して慎重に経過観察している.結論.従来は手術標本で病理組織学的診断がなされてきた胸腔内神経鞘腫の中には,適切な気管支鏡検査を行うことで診断が可能となる症例もある.