デサントスポーツ科学
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研究論文
1型糖尿病における運動誘発性遅発低血糖の発症機序の解明−1型糖尿病患者の新規運動ガイドライン作成に向けて−
佐藤 幸治藤田 聡
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2017 年 38 巻 p. 28-34

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抄録

本研究は,1型糖尿病モデルラットを用いて,中強度の一過性運動が骨格筋糖代謝活性の変動およびその関連遺伝子を同定することを目的とした. 6週齢のオスWistarラットにストレプトゾトシン(STZ)を投与し,1型糖尿病モデルラットを作製した.3日後,コントロール群(STZ CON),運動群(STZ+EX),正常のラットの運動群(CON+EX)に分け,両STZ群にインスリンを投与(0.5U/kg)し,正常血糖を確認後(0h),STZ+EX群は中強度のトレッドミル走(15m/min, 30min,傾斜なし)を行った.血液および骨格筋サンプルは0h, 1h, 3h, 5hで採取した.また,それぞれの群の1h, 3h, 5hのサンプルをマイクロアレイ法による遺伝子発現変動解析をそれぞれ施行した.その後,pathway解析を施行し,運動による遅発性低血糖発症に関与する可能性が高いインスリン経路系遺伝子を選定した. 血糖値は,STZ+EX群は3hで他の群に比べ有意に低下した.骨格筋のGLUT4 translocationはCON+EX, STZ CON群で,1hで有意に増加し,3hで減少したが,STZ+EX群においては,3h,5hで有意な亢進が見られた.マイクロアレイ法による遺伝子発現解析において,CON+EX, STZ CON群では運動直後および1時間後でOncostatin M(Osm),Signal transducer and activator of transcription 3 (STAT3)が増加していた.しかしながら,STZ+EX群においては,運動3,5時間後にOsmおよびSTAT3の遺伝子発現が増加していた. 1型糖尿病において中強度の運動は骨格筋のGLUT4の継続的な亢進が遅発性の低血糖を誘発している可能性がある.またOsmおよびSTAT3発現の遅延がGLUT4 translocationの継続的な亢進に関与している可能性が示唆された.

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