障がい者がスポーツを楽しむ機会が増えているが,熱中症事故の報告もある.脊髄損傷者の体温調節機構の理解が進む一方で,下肢切断者については不明な点が多い.本研究の目的は下肢切断アスリートの夏季活動現場における障がい者スポーツ中の体温変化を調査し,アイススラリーを用いた身体冷却の有効性を明らかにすることである.主な成果は障がい者スポーツ中の下肢切断アスリートの体温は約39℃まで上昇し,スポーツ後の脱水率が高い症例を観察した.また,身体冷却によって,体温上昇を抑える効果は示せなかったが,脱水率が軽減したため,高度脱水(熱疲労)の予防効果が期待される.本研究により,下肢切断アスリートにおける熱中症の危険性の理解と実践的な暑さ対策の一助になることが示唆された.