本研究の目的は,高齢者における体幹部骨格筋の量と質における5年間の縦断的変化を明らかにすることであった.本報告では男女23名(年齢:71.7±4.3歳, 体格指数: 22.1±2.6 kg/m2) における1年間の変化を報告する.被験者の身長,体重,体脂肪率,身体機能のほか,腹直筋と腰部多裂筋のBモード超音波横断画像を取得した.対象2筋の量の指標として筋厚を,質の指標としてエコー強度(高値を示すほど筋内への脂肪蓄積度が高いことを示す)を,また直上の皮下脂肪厚を算出した.その結果,腹直筋エコー強度を皮下脂肪厚で補正した値には1年後に増加傾向が認められた.全測定項目の変化量を独立変数としたステップワイズ重回帰分析の結果,腹直筋エコー強度の変化量の有意な予測変数として,同筋の筋厚変化量のみが選択された.少なくとも腹直筋の場合には,筋量の低下と筋の質の低下が関連している可能性が示された.