本研究は,形状と素材の異なる水着が泳速−抵抗関係と腹腔内圧(Intra-abdominal pressure,以下IAPと略す.)に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.大学男子競泳選手10名に,形状と素材の異なるレース用および練習用水着を着用させ,クロール泳のアームストローク泳(以下プルと略す.)と全身泳(以下スイムと略す.)における最大努力時の速度とIAPを測定した.さらに,プルでは,抵抗測定装置を用いて最大下から最大努力で泳いだ際の泳速−抵抗関係,IAPおよび最大推進パワーを測定した.その結果,最大努力による泳速は,プルおよびスイムともに練習水着よりもレース水着の方が有意に速かったが,IAPに有意差は認められなかった.一方,泳速−抵抗関係の回帰式より推定された同一泳速での抵抗値,最大推進パワーおよびその際のIAPは,水着間で有意差は認められなかった.以上より,レース用水着の着用は,プルおよびスイム共にパフォーマンス向上に貢献するものの,IAP,泳速−抵抗関係や最大推進パワーには影響を及ぼさないことが示唆された.