2018 年 39 巻 p. 76-83
本研究は加齢に伴う運動耐容能低下および骨格筋萎縮(サルコペニア)において,最近見出されたエネルギー恒常性維持に関わるホルモン,アドロピンの役割を検討した.サルコペニアを呈する代表疾患である心不全に着目し,慢性心不全患者を対象とした臨床研究と心筋梗塞後心不全モデル動物を用いた動物実験によってこれを検証した.心不全患者の血清アドロピン値は1.44±0.09 (ng/mL)と健常対照群 (1.64±0.07, ng/mL)と比較して有意に低値であった(p<0.01).さらに血清アドロピンは運動耐容能の指標である最大酸素摂取量および嫌気性代謝閾値と有意な正の相関を示した (r=0.65, 0.59).一方で血清アドロピンは換気応答と有意な負の相関を示した (r=-0.61).10-12週齢C57BL/6Jマウスを用いて左冠動脈を結紮し,心筋梗塞後心不全モデル動物を作製した.梗塞後心不全マウスではSham群と比較し運動時間・運動距離・最大酸素摂取量は有意に低下した.さらにこれらの低下は骨格筋ミトコンドリア呼吸能の低下と関連していた.今後,骨格筋組織のアドロピンを定量し,骨格筋ミトコンドリアにおける各エネルギー代謝基質の呼吸能との関連を検討する予定である.以上から血中アドロピンはサルコペニアや運動耐容能低下の新たなサロゲートマーカーとなる可能性が示唆される.